パラレル飛躯二次創作A

□あべこべ
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 飛影はものすごく怒っていた。
 昨日来たガキにえらく気に入られてしまった。それはまだいいとして、そのガキは彼のことを「チビ」だとか「可愛い」だとか生意気なことばかり言うので頭に来る。出来ることならあの憎たらしい舌を思い切りひっこ抜いてやりたい。あ〜まったく、ガキのくせに、ガキのくせに、ガキのくせに!!
 それだけならまだ許せるが、あろうことかすっかりなつかれてしまい、一日中彼にまとわりついていくら怒っても離れようとしない。静かにひとりでいるのを好むマイペースな彼にとって、はっきり言って迷惑この上ない。
「いい加減、どこかへ行ってくれないか。」
 飛影は厳しい口調で躯に言った。寝間着に着替えた躯は彼の寝台の上にいそいそと自分の枕や布団を並べ、忙しそうに寝る準備をしていた。
「え?俺、ここに置いてもらえることになったんじゃないのか?」
「いや、それはそうだが、お前の部屋はちゃんと別に用意されてるはずだろ。勝手にひとの部屋に住み着くな。」
「だって俺、お前のこと好きだもん。」
「んなもん知るか。」
 可愛らしくふくれっつらをして躯は飛影を睨みつけた。
「それともなんだ、お前、俺がいると困ることでもあるのか。・・・ああ、わかったぞ。ずっと気になっていたんだが、ここ、お前にとっちゃ格好のハーレムだよな。女が77人もいて男はお前ひとりだ。どうせ毎晩とっかえひっかえ違う女連れ込んでるんだろ。」
「アホか。そんなのこっちが地獄だ。貴様、ガキのくせに下品な奴だな。」
「そうは言ってもあの孤光って女とはデキてるんだろ?ありゃいい女だな。」
「勘弁してくれ、誰があんな恐ろしい女の相手するか。命がいくつあっても足りん。」
「じゃ他の誰か・・・」
「誰ともデキてない。」
 躯はあからさまに疑わしげな表情をした。
「そんなわけないだろう。まともな男だったらこんな環境で我慢できるはずがない。」
「よその男のことは知らんが、俺は全然なんともない。それどころか夜は女どもに襲われんように厳重に戸締りしている。実際、何度か危ない目に遭っているからな。この世に男に飢えた女ほど恐いものはない。大体、俺には経験さえない。」
「・・・経験って」
 躯は絶句した。
「まさか、女と寝たことがないって言うのか?」
「まぁそうだ。そんなこと露骨に言うんじゃない、マセガキめ。」
 ブホッと躯は吹き出した。顔を歪めゴホゴホと苦しそうにせきこむ。
「お前、800年も生きてきてチェリーボーイか!?参ったな、こりゃ。傑作だ!天然記念物だよ、お前!!アハハ、さいっこう!!」
 ゲラゲラと腹を抱えて大笑いする躯を前に、飛影は赤くなって拳を握りしめ怒りに震えた。
「誰に迷惑をかけるわけでもないし、そんなの俺の勝手だろう!悪いか、このクソガキ!!お前もガキとはいえ花もはじらう乙女だろうが、恥を知れ!!」
「プッ、さすがジジィは言うことが古臭いな!・・・いや、だってよ」
 躯は笑いすぎて涙を流していた。
「そりゃ誰にも迷惑はかけんが、お前よくそんなんで今まで800年も生きてこれたな、恥ずかしくて死にたくならんか。というかいっそ今すぐ死んだほうがいいんじゃないか。草食男子も大概にしろよ、あ〜面白。」
「貴様、いつまで笑ってるんだ!お前みたいなガキにそんなこと言われたくない!」
「アハハ、お前さ、ソレ一体何のためについてるわけ!?」
「指を指すな!!そりゃもちろん用を足すために決まってるだろうが!」
「ブハハハハハ!頼む、やめてくれ、笑い死ぬ!さすが、チェリー・・・」
「黙れ!!畜生、それでも7歳のガキか、大人をからかいやがって!さっさと出てけ!」
「ああ、お前全然わかってないな。」
 躯はニヤリと笑った。
「俺はお前なんかよりずっと大人だよ。なんなら俺が筆下ろししてやろうか?」
「おい、ふざけるな!俺はロリコン趣味なんて全くない!ぞっとすること抜かすな、ガキが!」
「じゃ、俺が大人になってからな。」
「クソ、もういい加減出ていかんといくらガキでも殴るぞ!」
「はいはい、言われなくても自分で出ていきますよ。」
 笑って手を振りながら躯はくるりと踵を返して部屋を立ち去った。
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