パラレル飛躯二次創作A

□黒猫
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 黒猫の体の傷が治った。
 とうとうこの日が来たか。俺は黒猫の回復を喜ぶと同時に、内心ひどく寂しかった。
「行ってしまうんだろう?」
 俺がおそるおそる尋ねると、黒猫はしばらく遠くを見つめて黙っていた。
「・・・そうだな。」
「このままここにいろよ。」
 とっさに俺が口走った言葉に、黒猫は驚いた顔をした。
「なに言ってる、お前に迷惑かけるだろ?」
「全然。」
「・・・いや、それは、」
「ここにいてくれ。もしお前が嫌でなければ。」
 俺が黒猫の顔を覗き見ると、黒猫はまだ半信半疑という表情で呆然としていた。しばらく落ち着かない様子でモジモジしていたが、やがて自分の寝床へ戻って行ったので、俺はホッとした。
 それで黒猫はまだ俺の部屋にいる。

 黒猫に名前がついた。
 ・・・というより黒猫自身にもともとついていた名前を教えてもらったのだけれど。黒猫は「飛影」という名前だった。俺はその響きがすごく好きだと思った。
「飛影。」
 名前を呼ぶと黒猫は喜んでミャーと鳴く。・・・はずはない。
 だけど俺のほうを見て、ちゃんと返事をしてくれる。
「何だ。」
 乱暴な返事ではあるけれど、俺はそれが嬉しくてたまらない。つい用がないのに何度も何度も呼ぶ。
「飛影。飛影。」
 そのうち黒猫は迷惑がって怒り出す。でも俺はそれさえもどうしようもなく嬉しい。
 ふたりでいると毎日が楽しい。
 
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