パラレル飛躯二次創作A

□約束
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 高校2年になったばかりの躯は、歴史の授業中に教室の窓から空を眺めて、「今日もつまらないな」と考えていた。青い空はすがすがしく澄み切って、綿菓子のような真っ白のふわふわした雲が風に乗ってゆるやかに流れている。その穏やかで暢気な光景が、かえって彼女をどうしようもなく腹立たしくさせた。
 短い髪に淡いブルーのリボンのセーラー服がよく似合う彼女に対する周囲の評価は、「えらい美人だけどえらい性格の悪い女」で、彼女自身は人からどう思われようが全然気にしていなかった。「つまんない奴等にどう思われても構わない」が彼女の口癖で、だからと言って彼女がこの学校を特に毛嫌いしているというわけではない。つまるところ、彼女にとってはこの世の中すべてがつまらないのだった。
 隣の席のおとなしそうな男子生徒が、緊張で真っ赤な顔をして身を乗り出し、こそこそと躯に話しかける。
「ねぇ、俺さ、今度のテストのヤマはってみたんだけど、聞く?」
「そういうのいらんから。別にテストとかどうでもいいし。」
 あまりに乱暴な返事だが、別に彼女がその男子生徒のことを嫌っているわけではない。ただどうでもいいと思っているだけで、彼女にとっては周囲の誰もが「どうでもいい存在」なのだった。乱暴な言葉遣いもいつものことで、彼女が子供の頃から高校生の今に至るまでずっと男言葉を使い続けているのも、彼女が「変人」と陰で言われている理由のひとつだった。
 冷たくあしらわれた男子生徒は可哀想にすっかりしょげかえってしまったが、躯はお構いなしで暇つぶしに教科書の隅にらくがきを始めた。なんとなく思い浮かんだ顔を、さらさらとペン先を走らせて器用に描いていく。
 まず、大きな吊り目を描いた。黒目が小さくて白目ばかり目立つ、目つきの悪い鋭い目。次にササッと描き足した眉も鼻も口も小作りで、見るからに硬そうな黒い髪は炎のように逆立っている。出来上がった顔を見て、躯は吹き出した。
「なんだ、これ。まるで漫画の悪役みたいだ。しかも思いっきりガキの。」
 もしかしたら子供の頃、なにかのアニメでこんな顔を見たのかもしれない。不思議と懐かしくて、心地良くて、どこかで会ったことがあるような気がする。なんにしろアニメ顔だ。よくよく見ると、意外と面白いというか、結構好きな顔だ。うん、多分くだらない子供向けアニメのキャラクターだろう。
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