パラレル飛躯二次創作A

□私が彼を好きにならない11の理由
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「あ〜やんなる。」
 躯がグラスをテーブルに置いて席に着きながら腹立たしくつぶやくと、直樹は驚いた顔をした。
「どうした?」
「いや、別に。」
 見ると、あの男子学生はすっかり片付けも済まし、ぼけっと暇そうにしていている。そのうちだんだん眠くなってきたらしく、とうとう席に座ったままコックリコックリと居眠りを始めた。
「なんであいつ帰らないんだろう。ひょっとして誰か待ってるのか。」
 食事も手につかず躯が彼の様子を見続けていると、びっくりするほど可愛らしい小柄な女子学生が彼のところへ慌てた様子でパタパタと走り寄ってきた。女子学生は彼の前に来るとペコペコ何度も頭を下げて、なにやら彼に一生懸命謝っているようだ。遠すぎて何を話しているのかまでは聞こえなくて、躯はやきもきした。男子学生は何かぶつくさ言いながら立ち上がると、ふたりで仲良く並んで食堂をあとにした。今まで無愛想きわまる仏頂面で通していた男子学生が、彼女と歩いているときには幾分か柔らかい表情をしていたのが、やけに印象に残った。
「あいつでもあんな優しい顔するんだ。それにしてもあいつ、どこであんな可愛い彼女見つけたんだろ。正直、あいつには可愛すぎてもったいない。」
 寂しくてやりきれない気持ちで、躯はほとんど手をつけなかった食事を直樹に無理矢理全部押し付けた。
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