Original

□救世主
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一それが、今。



俺のささやかな願いは、
風前の灯になりつつある。




うちはマダラの"月の眼計画"

…第四次忍界大戦によって。





崩れ果てた木の葉の里。

次々と倒れていく同胞達。

怒りや悲しみ、諦め…
そんな色に染まった仲間の顔。




そして俺は、



「やっと会えたな、うずまきナルト…」



うちはマダラの前に居る。



「ぜってーに…許さねぇ……!!!」



「ナルト…。私もよ…」



いのと一緒に。





「もっと早く出て来ていれば、
里もこんなにならずに済んだものを…。」


「里だけじゃねぇ…。

今まで築き上げてきたものも、
里の皆の火の意志も、

全部、全部…
お前が、めちゃくちゃにしたんだ!!!」


「穢土転生…。

そんなものを利用するあなたには、

私達がどんな思いで
大切な人に別れを告げるのか
分からないのでしょうね…」

いのは声を震わせながら冷たく言い放つ。



「その"火の意志"などと掲げている裏で
お前達木の葉は何をしていた…?

表舞台の栄華の為に
影でひっそりと消えていった者が
どれだけ居ると思っている…

そして それがまた新たな憎しみを生み、
その憎しみは限りない力を生む…


…うちはサスケのようにな。」



「サスケはぜってーに連れ戻す!!!」


そう言ってナルトは術を繰り出す。


「大玉螺旋丸!!!!」


「学習能力の無い狐だ。
俺に物理的攻撃は効かな……っっ????!!」


マダラの体がぴくりとも動かない。



「心乱心の術…成功…!」

そこには、印を結ぶいのが居た。


「山中一族が…。一杯喰わされたな」



ナルトが螺旋丸と共にマダラに向かって
一直線に飛んでくる。


「…しかし甘いな、木の葉の志士達よ」



その言葉を聞いていたいのが
すかさず反応する。


「ナルト!
マダラは術ごと私達を吸収する気よ!!」

「忍としての実力、その美しさ。
お前を戦力にしたいが……残念だ。」


「(!? 心乱心の術が破られて…!!?)」


いつの間にかいのの背後に立っていた
マダラは両手をいのの方へ翳(かざ)すと、
念力を使って一気にいのを弾き飛ばした。


いのはまるで銃弾のようなスピードで
大きな岩へ叩き付けられた。

そしてその衝撃で崩れた岩の塊が
いのの上に落ちる。



「いのォォオオオーーー!!!!!!!!!!」


「よそ見をしている場合か?」


マダラはナルトの螺旋丸を吸収して
ナルトの首を掴み、地面へ叩き落とした。


「ぐ………っ!」


「大切な友も、守りたい女も救えない。
お前の力とは所詮そんなものなのだ。

お前の本当の存在価値とはなんだ?

今はお前を認めている里の奴らも、
かつてはお前を
同じ木の葉だと認めなかったではないか。

そんな奴らを信じられるのか?

大切な存在を失った今、
お前にはもう何も残ってはいない。



うずまきナルトは、
里の"英雄"でも"救世主"でもない。


莫大な力を持って里の為に戦う
"兵器"だ!!!!!」




「違う……俺は…違う…っ」


漆黒の影がナルトを包む。


「お前の中の九尾は
俺に賛同してくれているようだぞ…?」



影はどんどん大きくなり、
ナルトも"負の色"に染まっていく。

目の輝きは無くなり、
生気を失ったナルトは
自らマダラに吸収されようと手を伸ばす。



「月の眼計画の…完成だ…!」


マダラが冷酷な笑みを落とした時、
小さな声が聞こえた。



「ナル…ト……」



今にも消えてしまいそうな
その声を聞いた瞬間、
ナルトを包む影の動きが止まる。


「山中いの…まだ死んでいなかったとは」






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