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□救世主
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「ナルト……」


いのの声はしだいに大きく、
そして力強くなっていき、

ナルトにも少しずつ
生気が戻り始めた。



「これは徹底的に
息の根を止めなければならないか…」


マダラが手を翳した時、
いのが埋まっている岩の間から
光が溢れ出してきた。


「これは…っ?!」

あまりの眩しさに
マダラは翳していた手で目を覆う。



光はいのを埋めていた岩を崩し、
その中からボロボロになりながらも
いのが這い出て来た。

いのは肩で息をして、
脚からは大量の出血をしている。


「脚が潰れて立てないようだな。」

マダラはいたって冷静に言い放つ。



「ナルト……」

いのは痛みに耐えながら
必死にナルトを呼び続ける。


「お仲間ごっこはもう終わりだ。
お前も…これで終わりだ。」


マダラがいのに向かって念力を放つと、
いのは目にも止まらぬ速さで印を結び
術の名を叫んだ。



「月下美人!!!!!」



すると、
無数の月下美人の白くて小さな花が
マダラを包み、
台風の如く乱れ舞い始めた。

その風力でマダラは身動きがとれない。


「(くそ…、これでは
風力が強すぎて吸収出来ない…)」



「お仲間"ごっこ"なんかじゃない…。
ナルトは、私の大切な仲間よ!!!」

いのがマダラを睨んで言った。


そして目線をナルトに移すと、
地面に叩き付けられたまま動かない
ナルトに向かって叫んだ。



「ナルトぉお! 目を覚まして!

あなたは里の兵器なんかじゃない!

あなたは、里を救ってくれた。
皆を笑顔にしてくれた。
希望を持たせてくれた…!

そして、

私の"かけがえのない人"になってくれた!」



ナルトからどんどん影が消えていく。

目にはうっすらとかつての輝きが戻り、
真っ青だった顔には
温かみを感じられるようになった。



いのは泣きながらナルトに訴える。


「あなたが居たから、
私はいつも笑顔で居られた!

あなたの言葉が、
私を強くしてくれた!

あなたの前向きな眼差しが、
私に勇気と希望をくれた!

…あなたと過ごした時間が、
私にたくさんの事を教えてくれた!


ナルト…!!


あなたは里だけじゃなく、

あなたが里で1番強くなるより
ずっとずっと前に、

私の事も救ってくれていたの。


あなたは、

私の"救世主"でもあるのよ…っ!!!!」



いのの言葉を聞いた瞬間に
ナルトを覆っていた影は消え、
まばゆい光がナルトを包み込んだ。

やがて その光は熱を帯び、
"尾獣モード"となって完全に復活した
ナルトがゆっくりと立ち上がった。


その眼には
うっすらと涙が浮かんでいる。



マダラを覆っていた月下美人の花が
ひらひらと地面に散っていく。

いのは力を使い過ぎて、
これ以上はもう限界だった。



「いの…、ありがとう…。」


ナルトは噛み締めるように呟くと、
自由になったマダラに向かって言った。



「確かに昔は孤独だった。

里の皆を信じられなくて
わざと壁をつくって強がってた。

だけど今は違う…。
里の皆を心から信じてる!

俺には仲間も、大切な人も居る。
お前には無いものを俺は持ってる!

もうお前の好きにはさせねぇ…!」


「フン、綺麗事をずけずけと…」

マダラがナルトに向き直る。


「俺に忍術など効かない。
どうやって俺を倒すと言うのだ。」



するとナルトは、自身の右手を広げて
マダラの方へ突き出した。

そして小さく深呼吸をしてから、
心を込めるように力の限り叫んだ。



「螺旋丸!!!!!!!!!!」



「忍術は効かないと言ったはずだ。
印も結ばずに何が出来る…血迷ったか?

馬鹿にするのも大概にし……
……ッッ???!! どういう事だッ????!!!」


マダラが苦しみだす。

面にはヒビが入り、
息が出来ないようでもがいている。

やがてマダラの体が膨らみ始め、
光が漏れだしてきた。


「こ、…これ…は……!!」




一一一一一一一バーーーーン!!!!!!!



大きな爆発音と共に
マダラの体から螺旋丸が飛び出した。

螺旋丸はその回転力をどんどん速め、
光の竜巻のように大きくなって
マダラを飲み込んでいく。



「お前は、吸収した物を
自分の体内に溜め込むしかない。

さっきお前が吸収した螺旋丸…

それを俺のチャクラと共鳴させて
コントロール出来るようにしたんだ。


…言ったろ?

お前の好きにはさせねぇってよ…!!」



「俺の…持っていないもの……

"愛"とやらには…
それほどの力があると言うのか……?

俺が今まで積み重ねてきたものを
一瞬で無に帰すような…

"愛"とは、一体………」




螺旋丸の跡に残った
マダラの亡きがらに歩み寄り、

露になった顔を見つめながら
哀しそうに囁いた。



「お前がその"愛"を知っていれば…
お前とは分かり合えたかもな…

マダラ…

お前の事は、忘れねぇ………。」











第四次忍界大戦



史上最大にして最悪の戦争が

終結を迎えた瞬間だった一一一










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