Original

□救世主
5ページ/5ページ




一あれから1年



木の葉の里では順調に復興作業が進み、
以前と変わらない美しさを取り戻した。

人々の生活も、
平和な日常に戻りつつある。




「ナルト、ここに居たんだ。」


そんな里の様子を
高台から眺めていたナルトのもとに、
いのがゆっくりと歩を進め近づく。

そして いのはナルトの隣に腰を下ろすと
同じように里の様子を眺めた。




青空が包み込む里の中には、


たくさんの人々で賑わう通り

建物や道の間を走り回る子供達

仲良く寄り添って歩く恋人達…



空に向かって葉を広げる木々は、
天から降り注ぐ光を
ゆらゆらと揺らし地面に写している。


耳を澄ませば、
風に乗って鳥のさえずりが聴こえてくる。




「皆、笑顔だ…」

ナルトは穏やかに微笑む。


そんなナルトを見つめ、
つられるように幸せそうな笑顔を
浮かべてからいのが言った。



「今日が何の日か、覚えてる?」


「忘れたりしないってばよ。

今日は…



終戦記念日だ。」






木の葉の広場には
続々と人が集まって来る。

どの人々も
皆 慎重な面持ちだ。

中には、1年前の悲劇を思い出して
泣き崩れる人も居た。



皆が見つめる先には、

戦争で亡くなっていった
人々の墓が並んでいた。



"英雄"達に手を合わせる人々。

その中に、ナルトといのも居た。




「もう二度と、
こんな悲しい事が起こりませんように…」



涙を流しながらそう言って
手を合わせる女性を見て、

いのも泣きそうに顔を歪めながら
誓うように言った。


「二度とこんな事が起きないように、
私達が強くなって里を守らなきゃ…」


ナルトは、そんないのの言葉に
しっかりと頷いた。





終戦式典が終わり、
いのとナルトは2人並んで
道を歩いて帰路についていた。



「…あ、そうだった…」

ナルトが思い出したように言う。


「どうかした?」

いのがナルトの方を向く。



ナルトは立ち止まり、
いのの方へ体ごと向き直る。

その表情は、どこか真剣だった。


「え、なに、急に改まって…」

いのが不思議そうにナルトを見つめる。




「あの時、いのが居なかったら
絶対にマダラを倒せなかった。

いのの言葉が無かったら、
俺はあのまま負けてた。

いのが、里を救ったもんなんだ。」



「そんな、私は何もしてないよ。

自分に出来る事を
必死になってやっただけ。」

照れ臭そうに微笑みながらいのが言う。



「あの時、いのは
俺の事を"救世主"だって言ってくれた。

でも、そんな俺にしてくれたのは
他の誰でもない いのなんだ。


いのが居たから、
俺は人を信じられるようになった。

大切な人を守りたいと思えた。
…"愛"を知ったんだ。


いのが、俺にとっての
"救世主"なんだってばよ。」



「ナルト…」



それからナルトは呼吸を整え、
決意を固めた様子で口を開いた。



「あれからもう1年だし、

言うまでに
かなり時間掛かっちまったけど

これが俺の気持ちだから、聞いてくれ。



いの。

俺は、いのに出会ったあの日から、


いのの事が、ずっと、


…心の底から好きだった。」




驚いて目を丸くしていたいのの顔は、

やがて月下美人の花のように
穏やかで優しい笑顔を浮かべた。










柔らかな光に包まれた木の葉の里で


2つの"愛"が

1つになった瞬間だった一一一










Fin.
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ