弥生の夢
□3月5日
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「はー…」
「ひひさま、どうしたんですか?」
目の前にちょこんと座り込んで儂を見上げてくるりぼんの娘が話しかけてきて、話しやすいようにちょうど良い高さの棚の上に乗せてやる。
「姫に会いてぇのぅ…」
ポツリと呟くと、娘は小さく身じろぎして眉間に皺を寄せた。
「ひひさま!あんなごうじょうなおんな、もうわすれてください!」
「…お主…姫にそっくりな顔で、何故そんなことを言うんじゃ…?」
悲しみに顔を歪ませて問うと、娘もしょんぼりと口を尖らせる。
「だって…ひひさまをあいしてるのに、いじをはってかってにでてくからいけないんだもん…」
「そうか…お主なりに心配してくれておるのかァ…」
ぷーっと膨れている娘の頬をつつきながら言うと、娘は儂の指を掴んでからぎゅっと抱き締めた。
「あたしがあのおんなの変わりにひひさまのおそばにいますから…もうわすれてください…」
きゅっと儂の指を抱く腕に力が入って、この娘なりに儂を心配してくれておる気持ちがひしひしと伝わってくる。
じゃが、このちっこい身体では儂を受け入れられないしのぅ…と思ったところで、ムラムラっと欲が膨れ上がってきた。
「お主はお主で愛らしいが、やはり儂には姫が必要じゃ」
いや…断じて性的な意味だけではないぞぉ?
あの姿もあの声も、あの香りもあの笑顔も全て、常に傍にないと不安になるんじゃ…
「ぶー…」
ぶーたれている娘に笑みを零してそっと頭を撫でてやる。
そういえば、この娘がいるということは、まだ姫も儂を愛してくれておるということじゃと帯留めのちびが言っておったな…
ただでさえ姫に似ていて可愛らしいのに、そう思うと余計に愛着が湧くのぅ…
「式の会場の準備が進んでおるか見に行こうかと思うんじゃが、お主も来るかァ?」
「いきたいです!」
ぱぁぁ!と一気に表情が晴れた娘に笑みを零しながら、そっと肩に乗せてやって立ち上がった。
→おまけ&つぶやき。