文月の夢
□7月4日
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「奥様、知り合いの組からさくらんぼが届きました!」
台所に入ると、瑠衣さんがニコニコしながら箱を差し出してきた。
「さくらんぼですか!わ、可愛い!」
箱の中を覗き込むと可愛らしい赤い粒が沢山詰まっていて、頬が緩む。
「早速今日のおやつに食べましょう?」
「はい!水に漬けておきますね!」
「あ、私やりますよ?」
忙しそうな瑠衣さんから箱を受け取ると、瑠衣さんはぺこりと頭を下げてから何かを持って慌ただしく台所を出て行った。
水を張った桶にさくらんぼを入れてから、ひとつつまみ上げてみる。
「ふふっ…美味しそう…」
「何がじゃ?」
すると、後ろから突然声をかけられてびくりと身体が跳ねた。
「狒々様…びっくりしました…」
振り返ると狒々様が台所ののれんをくぐったところで、摘んださくらんぼを差し出す。
「お、さくらんぼじゃねぇかァ」
「はい!いただきものですって」
狒々様の口元にさくらんぼを寄せると、ぱくりと指ごと食べられてしまった。
「あっ…狒々様ったら…」
「ん、うめぇ」
私の指をねっとりと舐めてからゆっくり唇を離した狒々様が、ペロリと唇を舐める。
そんな狒々様がとても厭らしく見えてつい見惚れていると、突然唇が合わさった。
「ん…ッ…」
口内に何かを押し込まれて、爽やかな甘さが口いっぱいに広がる。
「…美味いかァ?」
「はい…美味しいです!」
ニコッと笑って狒々様を見上げると、狒々様も微笑んで頭を撫でてくださった。
「今日のおやつの時間が楽しみじゃのぅ」
「はい!」
「では、おやつの時間までひと繋がりするかァ」
突然ひょいと抱き上げられ、台所を出て歩き出す。
「ひ、ひと繋がり?ちょっ、何それ…待ってください…!」
バタバタ暴れても下ろしてもらえず、部屋に戻ってからひと繋がりどころかさん繋がりされてしまった。
→おまけ&つぶやき。