長月の夢。

□9月9日
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「んんー………姫…?」


朝、目が覚めて隣にいる姫を抱きかかえる。


いつもなら寝坊しても抱きかかえた時点で目を覚ます姫が、今日は目覚めない。


珍しい…と思いながら姫の顔を覗き込むと、姫は青ざめた顔で眠っていた。


「…月のモンでも来たかァ?」


姫を布団に寝かせ直して、掛け布団を掛けてやる。


立ち上がってひとつ伸びをすると、儂はささっと着替えて部屋を出た。



朝餉を済ませ、部屋に戻る。


部屋に戻ると、姫はまだ眠っていた。


「んんー?」


布団の横に腰を下ろし、姫の頬をつんつんつつく。


「んぅ…」


少し眉間に皺を寄せたが、まだ起きる気配はない。


儂はぽんぽん、と姫の頭を撫で、立ち上がった。


部屋の前の縁側に腰を下ろして、煙管に火をつける。


煙を深く吸い込んで、ふー…と長く吐き出した。



「…んっ…はっ!痛っ!」


突然、ガバッと起き上がった姫が、腹を抱えて背を丸める。


「おぉ…姫、おはよう。」


「あっ…狒々様…ごめんなさい、寝坊してしまいました…」


申し訳なさそうに言う姫に、口角を吊り上げる。


「月のモンか何かきたんじゃろぉ?ゆっくりしとけぇ」


カコン、と煙管の灰を落として、立ち上がる。


「ちょっと、部屋、行ってきますね…」


姫が腹を抱えながらよろよろと自室に入って行くのを見ながら、布団の近くに腰を下ろした。


「…?」


多分、部屋で汚れた着物を処理してるんだろうが、なかなか戻ってこない姫に疑問を感じる。


「姫…入るぞぉ?」


襖越しに声をかけて、返事も待たずに襖を開ける。


中には、畳の上で力なく丸まっている姫がいた。


「姫…姫!大丈夫かァ?」


慌てて駆け寄り、姫を抱き上げる。


「狒々様…ごめんなさい…」


「月のモンかァ?」


「はい…そうでした…」


会話しながら姫を布団の上に寝かせると、掛け布団を掛けてから姫の腹を撫でた。


「大丈夫かァ?」


「はい…狒々様、ありがとう、ございます…」


再びうとうとし出す姫に、可愛いのぅ…と笑みが零れる。


姫が眠った後も、暫く腹を撫で続けた。





→おまけ&つぶやき。
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