長月の夢。

□9月10日
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「よいしょっと。」


「ちょ、狒々様!?これはちょっと…」


仰向けに寝そべる儂の上に、うつ伏せで姫を寝かす。


姫は顔を真っ赤にして抵抗していたが、布団をかけてからぎゅう、と抱き締めると大人しくなった。


「温いじゃろ?」


姫の背中を撫でながら問う。


「はい…あったかくて、お腹痛いのも落ち着いてきました…」


「そうかァ…そりゃ良かった」


「でも、重くないですか?」


「軽過ぎるぐらいじゃ。」


姫は、儂の胸に耳を当ててじっとしている。


「…狒々様って、意外と固いですよね…」


「…意外とは失礼じゃのぅ。」


「だって、着物着てると柔らかそうに見えるのに…」


つんつん、と姫が儂の胸をつつく。


「でも、いつも裸見とるじゃろ?」


「なっ…何言ってるんですか…!」


姫が、再び顔を赤く染めた。


「キャハハ!何を今更恥じらっとるんじゃ!」


「もぅ…」


「姫は、意外と柔らけェよなァ…」


「え、私太りました!?」


先程まで頬を赤らめていた姫が、今度はあっという間に青ざめる。


赤くなったり青くなったり、忙しいヤツじゃのぅ…


「いや…そういうわけじゃねェが…ぱっと見細いのに、脱ぐと出るとこ出てるっつーか…このへんとか。」


儂の上に乗っているせいで潰れている胸をつんつん、とつつく。


「なっ…!ちょ、狒々様!」


慌てて起き上がろうとした姫を、逃がさないようにしっかり抱き締めた。


「逃げるな逃げるな。流石に今日は襲わねェよ。」


「………」


姫は、儂の言葉に安心したのか諦めたのか、再び儂の胸に頭を預ける。


「狒々様の心臓の音、落ち着きます…」


「…そうかァ?」


「はぃ………すぅ…」


「…姫?」


静かになった姫を覗き込む。


「何じゃ、寝ちまったんか…」


すやすやと気持ち良さそうに眠る姫に、笑みが零れる。


寝るの早ェなァ…と思いながら、儂も襲いかかる睡魔に身を委ねた。





→つぶやき。
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