霜月の夢。

□11月1日
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「ん?…何じゃ、寝とるのか…」


縁側に転がってる姫を見つけて覗き込むと、どうやら眠っているようだった。


風邪ひいたらいかん、と思い布団を取るために押し入れを開けるが、そこにしまってあるはずの布団は一枚もない。


庭に目をやると、全て物干し竿に干されていた。


…仕方ないのぅ。


するりと自分が着ている羽織りを脱いで、姫にかけてやる。


それにしても、今日は暖かいのぅ…


姫の気持ちよさそうな寝顔を見ながら、儂もうとうとと睡魔に身を委ねていった。



「ん…」


圧迫感と暖かさで、目が覚めた。


のろのろと目を開くと、淡い色の何かに視界を遮られていて。


ゆっくり顔を上げると面をつけたままの狒々様のお顔がある。


…狒々様に抱き締められてたから暖かかったのか…


ってか、いつの間に眠っちゃったんだろ…


ごそごそと狒々様の腕から抜け出そうとすると、ぎゅっと抱き締められた。


「…姫…起きたかァ…?」


いかにも寝起きの掠れた声で問われ、どきん、と胸が跳ねる。


「今さっき、起きました…」


そうかァ、と上から声が降ってきて、腕を退けてくれるのを待つ。


しかし、いつまで経っても狒々様が動く気配はなくて、そろそろと狒々様のお顔を見上げた。


「あの、狒々様…腕、どけてもらえませんか?」


「…何故じゃ?」


腕に力を込めながら問われて、思わず言葉に詰まる。


「せっかくじゃし、もう少しこのままが良いのぅ…」


少し面をズラしながらしっかり目を合わせてそう言われ、不覚にもどきどきと胸が高鳴ってしまった。


「じゃあ…少しだけ…」


狒々様の胸に顔を埋めると、よしよし、と優しく頭を撫でてくれる。


いつまでもこんな穏やかな時間が続けば良いなぁ…なんて思いながら、再び睡魔に身を委ねた。





→おまけ&つぶやき。
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