霜月の夢。

□11月3日
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「ほれ、早くそこを退かんか」


「えー…嫌です!」


畳に座り込んでけらけら笑っている姫に、見ている儂まで笑みが零れる。


「もう剥がすぞぉ」


姫が座っている下にある畳の縁をしっかり掴んで、べりっと剥がす。


「きゃー!」


すると、姫は変わらずけらけら笑いながら、ころん、と畳から転がり落ちた。


「ったく…ガキみてェじゃのぅ」


はぁ、とわざとらしく溜め息を吐くと、狒々様に比べたら子供ですもん!なんて声が聞こえてくる。


「ほれ、とっとと掃除して炬燵作っちまうぞぉ」


「はい!」


馬鹿みてェに笑っていた姫が元気に返事をして、雑巾を手に取る。


掘り炬燵の中を拭き始めた姫を見て、儂は剥がした畳を倉庫に運び始めた。


今日は屋敷中の奴らが冬支度をしているため、倉庫の入口は開きっ放しになっている。


するりと倉庫に入ると、畳を置いてすぐに部屋へ戻っていった。


「あっ、狒々様、お掃除できましたよ!」


部屋に入ると、笑顔で姫が出迎えてくれる。


「おぉ、すまんのぅ!」


炬燵の台を設置していると、姫が干していた炬燵布団を持ってきてくれる。


それをばさりと掛けて、とりあえず炬燵が出来上がった。


「炬燵っ!一番乗りー!」


ぴょこん!と炬燵に入り込む姫。


「暖かくないっ!」


あははっと笑う姫に、当たり前じゃろ、と突っ込む。


「狒々様も一緒に入りましょう?」


「暖かくないのにかァ?」


「一緒に入ったら暖かいかもしれないですよ」


ニコニコ笑う姫に負けて、姫の真横に入り込む。


「ほれ、狭いぞぉ…そっち詰めんか」


「えっ…ちょ、何であっちに入らないんですか!」


真横に入った儂を、邪魔だと言わんばかりに見上げる姫。


そんな姫の耳に噛みついて、ニヤニヤしながら囁いた。


「火ィおこしてないんじゃし、離れてたら寒いじゃろぉ?」


「…ッ…でも…」


ぴくん、と身体を震わす姫に、ニヤリと笑う。


「姫、一緒に暖まろうぜェ…?」


やわやわと腰を撫でながら、姫を後ろに押し倒して行く。


「え、狒々様…ちょっ…まっ…んん…」


何やら騒いでいる姫の唇を唇で塞いでやると、やっと静かになる。


ちゅ、と音を立てて唇を離すと、姫は頬を赤く染めて儂を見上げていて、理性を失うには充分だった。





→おまけ&つぶやき。
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