師走の夢。

□12月2日
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「姫はどこじゃ!?」


姫を探して駆け回っていたら、息を切らしながら現れた鴉天狗にすぐに本家に戻るように言われ、慌てて戻る。


「狒々様、此方です!」


門を潜って叫ぶと、小妖怪が慌てて儂を呼んだ。


小さな背中を追っていくと、ある部屋に通される。


襖を開けると、姫は布団の中で青白い顔をして眠っていた。


「…姫?」


駆け寄って姫に触れると、いつもは暖かかった姫はひんやり冷たくなっていて、息もしていない。


「姫…?オイ、姫!冗談は止めるんじゃ!目ぇ覚ませ!!」


細い肩を掴んで揺さぶってみるが、姫が目を覚ます気配はなく、姫を抱き締めてぺたりと座り込んだ。


「姫…」


力いっぱい抱き締めても、狒々様、苦しいですよ…と言って笑うこともしない姫。


抜け殻のようになってしまった身体を抱き締めたまま、面の下で涙が溢れて止まらなかった。


「狒々…」


ぽん、と肩を叩かれ顔を上げると、総大将が眉間に皺を寄せている。


姫に気を取られていて気付かなかったが、部屋の中には総大将だけではなく、雪羅や紀乃ちゃん、鴆もいて、皆辛そうに涙を堪えていた。


「…帰る。」


姫を抱き上げて、総大将が何か言うのも無視してすたすたと部屋を出る。


朧車に乗り込んで、山梨の屋敷に帰るように指示してから、面を外した。


「姫…一緒に帰ろうなァ…?」


動かない姫の頬を撫でると、自分の涙がぽたぽたと姫の顔に落ちる。


拭っても拭っても涙が止まらなくて、屋敷につくまで姫を抱き締めながら泣き続けた。





→おまけ&つぶやき。
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