師走の夢。
□12月4日
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「痛…」
頭とお腹がズキズキする。
ここ、どこだろ…
きょろきょろと見渡してみるが、何もない真っ白な空間で少し怖くなる。
ふらふらするのも怖くて座り込んでいると、お腹からぽわ…と光が出て来た。
「あ…」
赤ちゃんかな?と追いかけてみるが、どんどん高く上って行ってしまい、追いつかない。
高く高く上って見えなくなってしまったが、光の消えていったほうを見上げ続ける。
…行っちゃった…
何となく置いて行かれた気がしてしょんぼりしていたら、背後に人の気配を感じて慌てて振り返った。
「あれ?やっぱり姫だ。こんなとこで何してんの?」
「あ…貴方は…」
そこには、夏に私を連れ去った黒猫さんがいて、妙に馴れ馴れしく話しかけてくる。
恐ろしくて後退るが、どんどん距離を縮められてとうとう腕を掴まれてしまった。
「やっ…離して…」
「まぁまぁ、悪いようにはしねぇから…とりあえず落ち着けよ」
また襲われそうな気配もなくて、恐る恐る警戒を解く。
「で?何でここにいんの?」
その場にどかりと座り込んで問いかけてくる猫さんにつられて、私も腰を下ろす。
「あの…ここ、どこですか?私、確かに死んだと思うんですけど…」
「ここは、生きてた世界に未練があって死にきれねぇやつがいるとこ。俺は未練なんかねぇけど、散歩してたら姫を見つけて下りてきたんだ」
あ…赤ちゃんには未練がなかったから、先に行っちゃったのかな…
ってか…
「猫さん…亡くなったんですか…?」
「まぁね…姫は、何があったの?」
そう聞かれて、拉致されて狒々様と別れてしまったことやその後のことを詳しく話す。
猫さんは黙って聞いていてくれて、実は悪い人じゃないのかな?と何となく思った。
「………お前の体には俺の妖力が入ってんだ」
「…え?妖…力…?」
突然バツが悪そうに話し出した猫さんに、理解出来なくて聞き返す。
「…俺は姫が欲しくて中に出しただけだが、多少の妖力が精子に含まれてんだ…お前の生き返りたいと願う気持ちが強けりゃ…いいことあるかもな…」
「?」
「わかんねぇなら今はそれでいい。そのうちわかるだろ」
そう言いながら、猫さんは少しずつ浮いていく。
「…待って、猫さん!」
「姫…生前、酷いことして悪かったなぁ…実は、姫に一目惚れだったんだよ…」
ふわふわと離れていく猫さんの言葉に、目を見開く。
「待って!猫さん、1人にしないで!」
手を伸ばしても猫さんに届かなくて、苦しくて猫さんの想いが痛くて涙が溢れた。
猫さんも、赤ちゃんも…行っちゃった…
「狒々様…」
会いたいよ…
ポロポロと溢れる涙が止まらなくて、泣き崩れる。
いつの間にか泣き疲れて、眠ってしまっていた。
→つぶやき。