師走の夢。

□12月5日
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姫ちゃんの通夜に呼ばれて、狒々の屋敷にやってきた。


通夜も終わって、皆案内された客間に散っていく中、袴姿に面をつけた狒々は姫ちゃんの亡骸の前に座り込んで動かないでいる。


「狒々…大丈夫かァ?」


声をかけると、のそりと振り返って儂を見上げてきた。


「あァ…総大将かァ…悪ぃなァわざわざ来てもらって…」


「ハッ…今更んなこと言い合う仲じゃねぇじゃろ…」


「キャハハ、それもそうじゃのぅ…」


いつも通り振る舞っているが、いまいち声に元気がない狒々に、やはり辛いんだろうと胸中を察する。


「…呑むかァ?」


お猪口を煽る仕草をして問うが、首を横に振られてしまった。


「今晩は、線香を絶やさねぇように起きてようと思ってのぅ…」


しみじみと呟いた狒々の面が悲しそうに見えて、少し言葉に詰まる。


「………そうか…そうじゃのぅ…じゃあ、お邪魔虫は去るかの」


「キャハハ!儂ァ姫と最後の2人の時間を過ごすんじゃ、大将は早ぅ寝ちまえ!」


手で追い払うような仕草をされて、襖に手をかけた。


「…狒々、無理はするんじゃねぇぞ?」


「あァ、大丈夫だァ」


寂しそうな狒々の背中を見ながら、静かに襖を閉める。


…まさか、懐妊がわかって一番幸せなときにこんなことになるとはのぅ…


はぁ…と溜め息を吐いて、あてがわれた部屋へとゆっくり歩いて行った。





→おまけ&つぶやき。
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