師走の夢。
□12月6日
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「ん…」
人のざわめきが煩くて、意識が浮上してきた。
…ざわめき?
あれ、私って誰もいない真っ白な空間にいなかったっけ?
不思議に思って、重い瞼をゆっくり開く。
「え…?」
どうやら、薄暗い檻の中に入れられているらしく、檻の外からは沢山の人が此方を見ていた。
「あ…あの!ここから出してもらえませんか?」
慌てて柵に駆け寄ると、外の人たちは無遠慮にこちらに手を伸ばしてくる。
「おぉ!本物だ!」
「すげぇ!どうなってんだこれ?」
「にゃっ!あ…や、やめ…ッあ…」
触れられた手の生々しさに、服を着ていないことに気付いて慌てて柵から離れようとした瞬間、
「にゃぁぁんッ!」
突然何かを掴まれた感じがして、腰が砕けてしまった。
ざわめきが大きくなって、恥ずかしさが増す。
足腰に力が入らなくて、床を這うように柵から離れて、握られたものを確認してみる。
「な…何これ…」
自分の腰あたりから生えている黒いふさふさしたしっぽ?のようなものに、思わず目を見開いた。
しかも、どうやら私の思い通りに動かせるらしい。
もしかして…
もしかして、猫さんの言ってた妖力って…
私が妖怪になったってこと!?
そこまで考えがまとまって、慌てて身体中を触ってみる。
しっぽ以外に、頭にふさふさした耳のようなものが生えていたが、それ以外は人と何ら変わりないようだった。
人ではなくなったけど、せっかく生き返れたんだから狒々様に会いたいと思ったが、部屋の中を見渡してみても出れるような場所はない。
沢山の人の目から逃れるように身体を丸めて隠しながら、どうやって逃げようか考え続けた。
→おまけ&つぶやき。