師走の夢。
□12月7日
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…目が覚めたら、昨日と同じ檻の中だった。
防衛本能なのか昨日はすぐに気を失ってしまったが、身体中が痛くて相当酷い扱いをされたと想像がつく。
相変わらず服は着せられてなくて、寒さを紛らわすように縮こまった。
狒々様に、会いたいなぁ…
頭の中に狒々様のお顔を思い浮かべて、はぁ、と溜め息を吐く。
「オイ…これ着ろ」
突然声をかけられて、びくりと肩が跳ねる。
主は特に気にすることもなく柵の隙間から着物を投げ込んで、話し始めた。
「これから山梨に移動すっから、とりあえずそれ着とけ。まぁ、檻ごと移動させるから裸でもいいんだけどよぉ…昨日たんと稼がせてもらった礼だ。」
「…やま、なし…?」
狒々様のお屋敷の近くかも…!
期待を胸に抱きながら、投げ入れられた着物を手繰り寄せて着付ける。
それを見た主は、まだ荷物を纏めないといけないから、と言ってふらりと立ち去った。
山梨についたら、とにかくここから逃げ出して狒々様のお屋敷に行こう。
でも、どうやって逃げ出そうか…
扉にかけられた錠の鍵は主が持ってるし…
唯一出られるのはお仕事をしに行くときだけど、主に鎖を引かれてるし…
はぁ…と溜め息を吐いて、膝を抱える。
そのうち大きな男の人が4人もやってきて、檻に布を被せられた後、ふわりと浮遊感を感じた。
こんな大きな檻、どうやって運んでるんだろ…
少し気になったが、被せられている布のせいで全く外の様子はわからない。
規則正しく揺れるのを感じながら、いつの間にか眠ってしまっていた。
→おまけ&つぶやき。