師走の夢。
□12月8日
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「姫…今日で、儂らが知り合って半年の記念日じゃぞぉ…」
葬式も終わり、姫のお骨の前にどっかりと腰を下ろして話しかける。
「本当なら、今頃また何かをお主に送って、その笑顔に癒されている頃なんじゃがのぅ…」
はぁ…と溜め息を吐くと、姫のお骨が入った壺を抱き締めた。
「ったく…人間っつーのは、本当に脆いもんじゃのぅ…たった半年も共に過ごせんとは…」
返事がないのも気にせずに、話しかけ続ける。
しかし、その一方的な会話はすぐに終わりを迎えてしまった。
「狒々様…お客様です…」
襖の向こうから瑠衣の声がして、壺をそっと元の場所へ戻す。
姫…少しだけ行ってくるなァ…
心の中でそう呟いて、重い腰を上げる。
「誰じゃ?」
襖を開けて部屋から出ると、そこには瑠衣が待ち構えていた。
「それが…雑貨屋の店主でして…姫さんのお客様なんです…」
「…雑貨屋が姫に?」
玄関に向かいながら、姫が何か頼んでいたのかのぅ…と考えを巡らせる。
しかし、すぐに姫と町に下りたあの日、姫は雑貨屋に行っておったのぅ…!と思い出して、のんびり歩いていた足を早めた。
「待たせたのぅ」
玄関につくと、雑貨屋が何やら包みを持って立っている。
「いえ…あの、姫さんは…?」
「姫は…ちょっといねぇんじゃよ…」
わざわざ説明するのが面倒で、適当にはぐらかした。
「そうなんですか…では、これ…御注文の品です。渡しておいて頂けますか?」
包みを手渡されて、受け取ると雑貨屋はさっさと帰ろうとする。
しかし、玄関を出る直前でぴたりと足を止めて振り返った。
「あ…そういえば、今来る途中の場所に、見世物小屋が来ていましたよ!」
「見世物小屋?」
「えぇ、珍しいですよね!では、失礼します」
玄関を出ていく雑貨屋を見送りながら、見世物小屋とは珍しいのぅ…なんて考える。
姫がいれば、一緒に行きたかったが…今は行く気にはなれんのぅ…
はぁ…と溜め息を吐いて、部屋へ続く廊下をゆっくり歩く。
姫が雑貨屋で頼んでいたもの…部屋に戻ったら見てみるかァ…
包みの中身を気にしながら、何気なく庭に視線を移す。
そういえば、よく姫が庭を掃いとったのぅ…
もう、そんな姿も見られないことを寂しく思いながら、再び溜め息を吐いた。
→おまけ&つぶやき。