師走の夢。
□12月10日
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見世物にされているか、犯されているかだけの生活が始まって、どれぐらい経っただろうか。
初めは涙が止まらなかったが、いつの間にか枯れたように涙は出なくなっていた。
「…はぁ。」
溜め息をつくと、幸せが逃げる…
わかってはいるが、もう私には幸せなんてないし関係ない。
柵の外から手を伸ばしてくる人々を一瞥して、静かに目を閉じた。
「牛鬼様、猫女ですって!」
「おぉ!猫女じゃ!…ん?」
どれだけ時間が経っただろうか。
うとうとしていると、生前よく聞いていた声が聞こえてきた。
…とうとう幻聴が聞こえてきたんだろうか。
恐る恐る目を開いてみる…
「やだ、姫にそっくりじゃない…」
柵の向こうには総大将様や牛鬼様、雪羅さんや紀乃さんや、牛頭くんや馬頭ちゃんや小妖怪たちがいて、驚いて目を見開いた。
「雪羅さん、紀乃さん…助けて、ください…!」
力の入らない身体で這うように柵に近付くと、雪羅さんが柵越しに抱き締めてくれる。
「姫!本当に姫なの?何でこんなところにいるのよ…!」
雪羅さんの目からぽろりと涙が零れ落ちたのを見ると、枯れたと思っていた涙が溢れてきた。
「せつ、らさっ…あいたかったですっ…」
私も柵越しに雪羅さんにしがみつく。
すると、ガチャン!と大きな音がして、ふわりと身体に羽織りのようなものがかけられた。
隣に人の気配を感じて驚いて顔を上げると、牛鬼様が眉間に皺を寄せている。
「本当に姫殿なのか…?」
「…はい…いろいろあって…こんな姿になってしまいました…」
猫の耳としっぽを揺らすと牛鬼様が慌てて目を逸らした。
「牛鬼!話しは後じゃ、とりあえずここから出るぞ!」
柵の向こうから慌てた様子の総大将様の声が聞こえてきた瞬間、ふわりと浮遊感を感じる。
牛鬼様に抱き上げられていて、あっという間に他の方々と外にいて驚いた。
「寒…」
この季節に、裸に羽織り一枚という格好では流石に寒くて、ぶるりと身体を震わす。
「すぐに朧車を呼ぶ。姫ちゃん…狒々に会う前に、詳しい話を教えてくれんかのぅ?」
「…はい」
コクリと頷くと、風を切るように颯爽と朧車が現れた。
そこに乗せられると、雪羅さんと紀乃さん、総大将様が乗り込んでくる。
「………あの…他の方々は…?」
牛鬼様たちが乗り込んでこないのを不思議に思い問うと、総大将様が優しく微笑んでくれる。
「あいつらは狒々の屋敷へ戻るんじゃよ。姫ちゃんは気にしなくて良いから、まずは休むと良い」
その優しい言葉と、私を抱き締めてくれている紀乃さんの温かい体温に安心して、突然睡魔が襲ってくる。
久しぶりに心の底から安心しながら、本家につくまで紀乃さんに寄りかかったままうとうとしていた。
→おまけ&つぶやき。