飛鳥シリーズ(杏)
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…翌日。
氷帝では全員参加の委員会決めがあった。
私にはあまり関係なかったけど。
「委員会決めやるぞー」と教師が入ってきて
一通りの仕事を解説した後どれに入ろうか一応真剣に考えていた私に向かって一言。
「あ、帰国の奴は海外交流委員って決まってるから」
三年間変えられない委員会をそんな簡単に決められちゃったのか私は。
全身の力がふにゃっと抜けた。
暇をもて余して机にうつ伏せ右を向くと、
ぐーすかぴーすか耳障りなイビキを立てて眠る男子が一人。
…なんか可愛い、けど。
「ねぇここ最前列だよ?熟睡しすぎ」
シャーペンの先で軽くつつく。
「……へ?」
そいつが寝ぼけ眼でこっちを見た。
「だから、一応授業中。とりあえず起きようよ」
隣の席の生徒が熟睡してて怒られるのに巻き込まれたくはない。
「…何やってんの?」
「委員会決め。それを聞いてくるって事は授業の最初っから寝てたんだね。もう評決入ってるけど」
斜め前で担任が「じゃ、校外活動委員やりたい奴いるかー」と挙がった手の数を数えている。
「校外活動委員?」
「そこから?…えーっと、校外活動の実行委員。遠足とか修学旅行とか」
次の瞬間、眠り羊が犬に化けた。
私にはそう見えた。
「マジマジ?何か楽しそうだC!!」
…本っ当に話聞いてなかったんだな、こいつ。
呆れている間にそいつ…芥川慈郎はむっくり覚醒して決まりかけていた校外活動委員の座を強引にむしりとっていた。
…さりげなく恐ろしい奴。
唖然としている校外活動委員候補に心中で合唱する。
満足したのかあっという間にまたイビキを立て始めた彼を尻目に私はため息をついた。
「…じゃ、これで決定な。集合場所に移動しろー」
担任が委員決めの終了を宣言すると共に教室中から椅子の音が響く。
私も筆記用具を掴んで立ち上がった。