飛鳥シリーズ(杏)
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コピー機がガラリと音を立てて印刷したての紙を吐き出した。
137枚の藁半紙を一枚一枚折ってまとめ、137の封筒に入れていく。
大きな机に散乱する書類の一角が片付いた所で私は顔を上げた。
「ちょっと仕事してよ。私二日連続で徹夜仕事したくないから」
「面倒なんやもん、部活で疲れてんのや、寝かせてくれ」
「あんたが枕にしてるその書類オーストリアに送るんだけど。
後さ、これから本格的に寝るってのに眼鏡外さないんだ?」
「裸眼は恥ずかしいんや。……何や、眼鏡外してほしいん?
飛鳥に言われたらしゃーないわな」
……この変態、真剣に殺しても良いだろうか?
「眼鏡外せば仕事の能率上がるっていうなら今すぐそのダテメ叩き割る。
上がらないなら顔面叩き割る。どっかのナキボクロが一気に書類流し込んできたせいで私昨日家帰れてないんだけど。
……そうだあいつあんたの部長じゃん部長の穴埋めしてよ」
「えー、景ちゃんはマイペースやししゃーないやろ。やる時はやるやろーし。
大体あの景ちゃんを指図できる奴なんてこの世界におらんで?」
……景、ちゃん。
あぁ、あのナルシストか。
顔面一発殴ってやりたい奴第2位の生徒会長か。
……侑士が制御不可能というのなら相当だ。
「じゃ、会長のヤル気が一昨日の朝〜昼休みだったんだろうね。
よりによって人が熱出して休んでる時にヤル気出すか普通」
封筒にドイツ語で宛名を書きながら切手の在処を考える。
あっ、わかった侑士の頭の下だ。
よし買い直そうそれくらい生徒会が出してくれるに違いない。
正確には病み上がりの人間に残業させた生徒会長が。
「一昨日の朝〜昼休みやったら景ちゃん激機嫌悪かったで?
……多分、樺地あたりにやらせてるんやろ」
「誰、それ?」
「樺地は景ちゃんの幼馴染みで1つ下の……まあ景ちゃんの学校内での家来ってとこやな」
それは随分損な役回りだと思う。樺地君、憐れ。
「……侑士」
生徒会宛に切手代の予算請求書を殴り書く。
「コンビニ行って切手買ってきて。あ、触らずに持ち帰ってよ」
「そんなの無理に決まっとるやん。景ーちゃーん」