飛鳥シリーズ(杏)

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数時間後。

現在地忍足(侑)家門前。

おかっぱ頭の男子と鉢合わせ。

「あ、お前……侑士んとこの」

「忍足(侑)同類じゃん」

「……それ誉め言葉じゃねーだろ」

「うん、誉めてない」

誉められる訳がない。


夜九時に人の家の前で〓iiリモコン持って立ってる奴を。


「何やってんの、こんな時間に? あ、家出か」

「よく分かったな。流石侑士の従姉妹」

「うわぁ嫌み返し? 最っ悪」

流石とか言われた。

「いや誉め言葉だ」

うんわかった。侑士逝って良し。

「あのさ、家出してきたならこれ頼んで良いかな」

書類を数枚向日に押し付ける。

「判子押して会長分とコピーして明日持ってこいって伝えて欲しいんだ」

「嫌だ」

二文字で斬られた。

「じゃ、取引しよう」

「嫌だ」

切り捨てパート2。……何だか調子が狂う。

自分のペースを取り戻す為にポケットに手を突っ込むと、かチャリと冷たい物に触れた。

引っ張り出す。

「今さ、侑士ん家納豆だらけなんだよね。多分向日君にとっちゃ天国だと思う」

忍足(侑)家の鍵。

なんで持ってるとか聞いちゃいけない何故かおばさんがくれたんだ。

「ならやる」

恐るべし納豆。

頭良くなるだけじゃなかった向日も釣れた。

そんなに納豆好きなのか私どっちかって言うと嫌いなんだけどこれ以上何か考えてると目の前のちっこい奴に殴られそうなので思考回路を断ち切る。

向日に書類と鍵を渡してすこし歩いた所で、弦を弓でこすったような騒音に足を止めた。
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