Gimme Some Truth

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美月のところまで噂は届く。

織田との戦争が激化しているらしい。政宗様は関東に行ことも多くなっているようだ。
織田は九州から国の制圧を進めていると聞くが、制圧した国を焼き払い、国民を全滅させるらしい。
魔王の通った後は荒れ野と死体があるのみだと言う。

自分の故郷はどうだったのだろうか。
美しかった田園。緩やかな川。水と緑に恵まれた、穏やかで豊かな国だった。
織田の属国にされているかもしれない。
小さな、小さな国だったし、閉鎖的な国だったからもぅ人々の記憶からはなくなっているのだろう…。


奥州は、織田に蹂躙などさせてやるものか。この国は政宗様の国なのだから。
なんとしても守らねばならない。国力を強くする。それが美月が今の自分に課した使命だ。
戦場で横を走れはしないが、政宗様が安心して戦場に向かえるようにする。それは美月の望みであった。



少しずつ、国の色が変わる。
沢山の国の色が織田により変えられていく。国を取ろうとしてるのか、日の本の国全体を滅ぼそうとしてるのか。
その意味はすらないように。

戦争は激化して行った。



政宗様は織田を射つが為に関東に向かった。
奥州は兵もかなり政宗様に付いて行き、今は農民、平民ばかりだ。

兵のいない町に敵襲を知らせる角笛の音が響き渡った。
信長が関東で奥州や、武家の連合と戦っているというのに。

明智光秀が兵力の無い、この国に攻め行ったのだ。



何故か光秀は美月の前に現れた。
居場所を知っていたかのように。
「お元気そうでなによりです。相変わらず美しくあられる。」
微笑みすら浮かべて光秀はいう。

魔具と呼ばれる不思議な力を持つ武器。そんな物が沢山ある。
政宗様の雷を起こす刀。
真田の持つという槍。
光秀の持つ鎌。
美月の故郷にも封印されてる魔具がある。国主である父上は亡くなったが。美月が封印の解除方法を引き継いでいる。

「魔具を手にいれたいのです。一緒に来ていただけますね。」

絞り出すように、魔具など知らない。断ったらどうするのか?と訪ねる。

町は光秀の軍に包囲されている。こちらに兵力もない。

「あなたは知っているはずです。姫が素直になって頂けないなら、火を放ちます。きっと美しいですよ。
貴女の故郷も美しく燃えましたね。
まだ美しく残ってもいますよ。」

拒否権のない美月の困る様子を楽しみながら見ている。
火など放たせる訳にはいかない。まだ沢山の国民が町にいるのだ。
しかし故郷がまだある?
罠なのだろうか。


美月は、そろりそろりと窓の方へ後退り、窓から外へ逃げ出した。
光秀が解除方法を美月が知っていると確信がある以上、町に火は放てないという計算だ。
私と共に解除方法ごと焼き尽くすわけにはいかないだろう。

政宗様が戻るなり、周囲の同盟国が気付き助けに来てくれるまで、なんとしても逃げ続けなければならない。

役場の庭に飛び出て、出口へ向かって走る。

光秀が楽しそうに「鬼ごっこですか。」と笑う。美月の考えなど分かって、楽しんでいるのだろう。

後ろから、鎌の刄が向かってくる。職場が変わってから刀の携帯しなくなったのが悔やまれる。懐から懐刀を取り出し、なんとか鎌の刄を防ぐが2発、3発と鎌が襲いかかる。それも何とか避ける。
なんとか大木の裏に回り息をついた。

しかし力の差は歴然だ。いつか捕まる。
逃げ道を探すがまだ出口までは結構な距離がある。庭は広く、障害物も少ない。
町へ出れば少しは地理的に有利かもしれないのにと唇を噛む。

そんな考えながらも、木の後ろから現れた鎌の刄を避け、出口へ走る。光秀が鼠をいたぶる猫の様に手を抜いて楽しんでいるのが分かる。それも悔しいが逃げる為の唯一のチャンスだ。

鎌が美月の髪を結んでいる紐に引っ掛けられ切られる。長い髪がフワリと広がる。
「いつか女性に戻って独眼竜に愛されたいとでも考えていたのですか?」と意地悪なことを言われる。
考えたこともなかったが、いつか…と胸の奥底で期待していたのかもしれない。
自分でも気づいていなかった恋心を気づかされた。

そう美月は政宗様が好きなのだ。
今。政宗様に会いたい。最後に一目見てから死にたい。
もう大分長い間お会いしてない。

しかし、考えを振り切り、出口向かって走る。
今はそんな事を考えている余裕はない。

髪が風にのって舞い上がる。その髪を鎌がバサリと切り落とした。腰ほどに有った髪は肩の長さになり。所々長いままだ。
二度目の振り下ろしで右側の髪が更に短くなった。

「こうすると本当に男の子みたいですね。」
鎌を振り上げながら、光秀が言う。
振り下ろされた鎌は顔の横を通り過ぎ、反動で柄の部分で足を横殴りされる。
堪らず、土の上に転がる美月。懐刀も手から抜けて少し先に飛ばされている。必死に立ち上がろうとするが、足が真っ赤に腫れ上がってきた。上半身を手で支えるのが精いっぱいである。
正面に光秀が立って居る。

いきなり鎌が着物の胸の合わせの部分を切り裂く。胸を締め付けているサラシが見える。
光秀が意地悪い顔をして、サラシを切り裂く。
まだ、発育途中の小ぶりの胸が零れ落ちる。
左手で着物の合わせの部分を胸元に引き寄せ、右手を伸ばし懐刀を掴む。

光秀は袴に狙いを付けてくる。
痛む足を引きずり、後ずさるが今度は脇腹に鎌の柄で突きを入れられる。
体が崩れ落ち、意識を失いそうになる。

連れ去るためにか、美月の着物の首の後ろの部分を引っ張り上げられ、膝立ちさせられる。
何かが風を切る音がした。光秀の手が離され、土の上に顔から落とされた。

短剣が少し先の地面に突き刺さる。
光秀と美月の間に誰かが短剣を投げたらしい。

「Shit!俺の国で勝手なことしてんじゃねーーよ。」
「なんで戻って来れたんだい。君が帰って来た時には国も、可愛い弟君も全てなくなっている予定だったのだけどね。」
「はて。何でだろうな。オメーが人んちでParty始めようとしてるって言う話を聞いてね。戻ってきてやったんだ。家主の居ないところで勝手に始めてるんじゃねー。」
政宗様はかなり怒っている。
いきなり六爪抜いて、光秀に切りかかる。光秀はひらりと避けて塀の上へ飛ぶ。
「今はあなたとやりあう時ではありません。またの機会に。」
と去っていく。

政宗が美月を優しく抱き起す。
「悠、大丈夫か?」
「政宗様、明智が火を・・・」
「OK!大丈夫だ。もぅ喋るな。」

一つ頷き、そして美月は意識を手放した。

政宗は少しの間、美月を抱き上げたまま動けずにいた。
土や、擦り傷で汚れた顔を指で擦り、土を落とす。キメの細かい白い肌が現れる。
髪は不揃いに切られており、切り落とされた髪の毛が庭に散乱している。
胸元から手が離れ、着物の胸の合わせからは小さな谷間が見えている。

小さく開いた唇は、桜色。小さな顔に、長い睫。さっきまで潤んだ瞳が見えていた。そして細い首に華奢な体。細い腰。抱き上げてみて軽さを実感する。
少女の体であると。
体の奥が疼くような衝動にかれれる。

後ろに立つ、小十郎に俺は一体今まで何を見てたんだろうな。と声をかける。
小十郎が上着を脱いで美月に掛ける。
まったく気づかなかった。と小十郎も頷き、取りあえず、城へ戻ることにした。

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