Gimme Some Truth
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目まぐるしい2日間が過ぎた。
隊の編成を考え、防具や武器の点検。
兵たちの食糧の調達、分配。
他の隊との調整。
雑用は多岐に渡った。
なんとか無事、出発を向かえる事が出来そうだ。
伊達軍は隊を二つに分ける。
政宗様率いるは、少数精鋭の斥候隊。織田の懐へと直接向かう。
もぅ1隊は本陣として陽動と戦力の分散を受け持つ。
後ろから回るとは言え、敵もそんな事は考えて兵を配置しているだろう。
その兵を引き付けておく役目を任せた。
その隙に斥候隊は、道ならず道を通り奇襲をかける狙いだ。
裏へ回る分距離があるので、連合軍の中で一番早い出発となる。
出発の刻限が近付くと、幸村と信玄が見送りに現れた。
幸村は美月の姿を見つけると、またしてもヒシっと抱きついてくる。
流石に鈍感な美月でも、この事が政宗様の機嫌を損ねたらしいことは分かったので、然り気無く幸村の腕から逃れた。
「美月姫。やはり某と共に行きましょう。
やっとお会い出来ましたのに…。」
雨綺国は自分にとっても故郷なのです。と訴える。
美月の両手を、自分の両手で持ってギューっと握りしめる。
離れたくないという気持ちを態度で示しているようだ。
「幸村には信玄様と戦うと言う役目があるではないの。」
私は大丈夫だから…。と説得する。
織田は任せるから、必ず勝って一緒に故郷へ帰ろうと。
あの…。と幸村が言う。
「昔の約束を覚えてくれておりますか?」
何か約束をしていただろうか?
小さく首を傾げる。
「水鏡(みかがみ)池の畔での事でござる。」
水鏡池は、真実を誓う池で、結婚の誓いの神儀を行う。
水鏡池の前で嘘を付くと、竜が現れ嘘を付いたものを食い殺すと言う。
そぅ。昔、水鏡池で結婚の誓いをする男女を見ていた。
いつか私達も池の畔で、誓いを立てようと約束したような気がする。
「故郷に戻れた際は、祝言を挙げたいと思うのでございます!」
言うなり、真っ赤になって走り去っていった。
助けを求めるように、信玄に視線を移す。
「あやつは姫のことを、ずっと待っていたのだ。
あやつなりの愛の告白じゃ。」
楽しそうにガハハと笑う。
…笑いごとじゃない。
政宗様から怒りのオーラが溢れ出している。
第一、かなり幼い頃の話だ。
しかし、そんな約束よりも私は幸村とは許嫁である。
なぜ、私との口約束の方を言ったのだろう…。
しかし、親同士の決めた決め事も、子供の口約束も昔の話だ。
幸村を『愛する人』としては見れないような気がする。
幸村は昔の綺麗なままの心を持ち続けている。
それに対して私はどぅだろう。
嘘を付くことを覚え。嫉妬や猜疑心。
汚れてしまっている。
大人になってしまったのだろうか…。
今の私には幸村は眩し過ぎて、辛い。
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出発のホラ貝の音が鳴り響く。
その先頭に立つのは、奥州筆頭、伊達政宗!
「おめえら、オレについてこれんのか?」
「死ぬ気でついてくぜーーー!!!」
決戦の火蓋が切って落とされた。