Gimme Some Truth

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硬い板の上で、無理矢理された為か体中が痛い。

手が離され自由になったが、立ち上がる気さえ起きない。
先ほどから止まらない涙を拭う為に手を持ち上げる気さえ起きない。

着物を取りに行って、羽織りもしたい…。
頭では考えるが、体は腕の一本も上がらない。


光秀が満足そうに、肌を撫でてくる。

「美月。
封印の解除方法教えてくれますね?」

虚ろな瞳で、光秀を見返す。
知りたいならば、教えよう…。
…もう何も考えたくない…。

そんな考えが頭をかすめる。

…。駄目だ。
人が…沢山の人が、犠牲になる。

「教えるわけには、いかない…。」
唇を噛みしめる。


「痛っ…。」
腹部に痛みを感じる。
光秀が、美月のお腹辺りを軽く爪で切り裂く。
赤い血がジワリと出る。

「こんな小さな傷では、駄目ですか?」
今度は、もう少し深めに傷つけられる。
「あぁっ…ぅ…。」

白い肌に小さな傷が増えていく。
「とても綺麗です。
綺麗な真っ白な雪を汚すみたいで…。
欲情してしまいそうです…。」
身体には既に先程付けられた、赤い痕が沢山散っていたが、更に赤い血が零れる。

逃げる為、必死に立ち上がる。
足がもつれる。
背中を、縄の様なもので叩かれた。
「痛っ…きゃぁっ。」
縄は肌に食い込み、ジンジンと痛む。

背中には一体何本の縄の筋の痕が作られただろう…。


******


「封印は、神社の龍の眼と私の血液…。」
とうとう、答えてしまう。

「湖の祠へ奉納します。」

そうすると、祠の岩が割れるはず。
中に何があるかまでは知らない…。

「いい子ですね」
と、唇を重ねられる。
口の中を、ゆっくりと掻き混ぜられ、離れた。

そのまま光秀は立ち上がり、部屋から出て行く。


光秀が部屋から消えて、扉に鍵を外からガチャリと締められる。

鍵が締まったことに安堵する。
やっと居なくなった。

そして後悔が押し寄せる。

教えてしまった…。
あの、人の命をなんとも思わない男に。
私の故郷を滅茶苦茶にした男に…。
奥州の皆の上に、平然と岩を落としてきた男だ。

簡単に、人を傷つける。
殺すだろう。

私を穢した男に…。
教えてしまった。

刺し違えても、殺してやりたかった男だ。


「うっ…。ふぇっ…。…っ。
ぅあーーーーー…っ。」
涙が流れ続ける。
嗚咽が止まらない。

悔しい。
…悔しいのだ。

拳を握り、床を叩く。
何度も…。何度も。

絶対に、負けない。
屈してなどやるものか。

心に誓う。


光秀に、魔具は渡さない!!!!


******


翌朝、召使の女が、雨綺国への出発は明日に決まったと伝えに来た。

女物の着物を用意されるが、男性者を用意して欲しいと頼む。
狩衣が用意された。


出発の時まで、光秀は姿を現わさなかった。

情報だけ聞ければ用無しという事だろうか。


相変わらずの、気持ちの入っていない冷たい顔。
「おはようございます。」
と言われる。

美月も冷たく、答える。

「随分と冷たい態度ではないですか。」
貴女は私に忠誠を誓っているんですよ?
気にもしてないだろうに、問い掛けながら後ろから腕を美月の体に絡めてくる。

「何故、男の恰好なのですか。」
耳元で囁く。
「この恰好の方が動きやすいのです。」
淡々と答えながら、腕から逃れようとする。

髪が掴まれる。
「短く切ってしまったのですね。」
誰が切ったと言うのだ。
と気持ちを乗せて睨む。

「こんなには切っていないつもりでしたが…。
確かにその恰好の方が貴女にはお似合いかもしれませんね。」
髪を指に絡めながら言われる。
首筋に唇を押し付けられた。
舐め上げられる。

「…。
可愛く反応しないのですね。」
面白くないと言う。

さぁ。故郷に向かいましょう…。


明智領と雨綺国はそう遠くない。
順当に行けば、2,3日で着くだろう。

途中、浅井長政の領地に寄る。
連合軍と戦うようにと、光秀が長政に言う。

美月は少年の恰好なので、小姓として控えているように言われた。

― 私が聞いてて良いのだろうか?
 光秀が作戦を指示する。

連合軍は一回引いたものの、武田と上杉領にて留まり、機会を伺っているという事だ。

徳川家康と浅井長政で、連合軍を迎え撃つ。

少し遅れて織田の鉄砲隊が加勢する。

聞いたことを頭に留める。

どうにか、伝える手立てはないだろうか。
と考えながら…。



長政殿の隣には、美しい黒髪の女がいる。
濡れたような黒い髪、豊満な胸とお尻、締まった腰。
艶めかしい色気を放つ女性だ。

私とは真逆だ。
この女性が、狩衣を来ても男には見えないだろう。

「あの方が気になりますか?」
織田の妹君と教えられる。

絶世の美女と名高い、市様。
納得する。
政略結婚と噂を聞いたことがあるが…。
長政殿と、仲睦まじく見える。

「…仲の良いご夫婦なのですね。」

第六天魔王をと呼ばれる兄を持つ、姫が幸せな結婚生活をしている。
不思議だ。

「仲が良い?
そうですね。
幸せは何処まで続くのですかね。」

…なんだろう。
光秀の機嫌を損ねた気がする。
この氷のような、人を殺すことでしか生きてる実感を得ないような男が…?


長政殿が出陣の準備の為、先に席を外す。

「市様。
あなたの役割が分かっていないようですね?

イラつきを感じさせる声。
こんな声も出せるのか…と驚く。

―しかし役割とは?
 それに、主君の妹君に対しての口の訊き方では無いのではないだろうか…。


取りあえず、今日は浅井の屋敷に泊めてもらうことになりそうだ。

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