中編(文)

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ずっと大好きだった。

「良かったね」なんて言えないよ。



すぐ近くに住む幼なじみの優斗に彼女が出来た。

「瑞貴!
ほら!学校行くぞ」

「頭痛いから休む」

「仮病だろ?」

――――まぁ、頭は……ね。
優斗、心は本当に痛いよ?

言えるはずないけど。


鏡の前で笑顔の練習。
1、2、3回。

――――よし!
ちゃんと笑えてる……。


最後に新しく買った、ピンクのリップを付けて完成。




「お待たせ!」
練習した笑顔で微笑んだ。

「おせぇーよ」
コツンと頭を軽くこずかれた。


小学校の時から、ずっと一緒に登校していたのだ。

一緒に居続けたいと思って、優斗と同じ高校を選んだ。

私の一番は優斗で、優斗の一番も私だと思っていたのに……。



私に嬉しそうに彼女の事を話す、嫌い。
私を妹みたいって言うの、嫌い。
嘘をつけない所、嫌い。
顔が良くて、頭が良いのも、嫌い。
少しモテる所も、嫌い。

私だけが優斗の良い所を知っていれば良いのに。

嫌い、嫌い、嫌い……。
どんなに嫌いが積み重なっても、「好き」に敵わない事を知った。



いきなり世界が歪んで見えた。

――――貧血?
グワン、グワンと頭が痛い。
気持ちが悪くなってきた。

我慢出来ずに膝を付く。


「瑞貴、大丈夫か」

「あんまり大丈夫じゃないかも……」

「誰か呼んでくる、ちょっと待ってろっ」

優斗が駆けていく。

後ろ姿が段々と小さくなっていく。


――――置いて行かないで……。

瑞貴の意識が闇へと落ちていった。
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