中編(文)
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外を見れば雪がちらつき、窓からは冷たい風が吹き抜けた。
冷気の気配と一緒に、忍びの気配を感じる。
チラリと目をやれば甲斐の忍びが現れた。
「龍の旦那、瑞貴様来てない?」
「Ha?
何してやがるんだ……あいつは」
「旦那が怪我したって話を聞かれちゃって、奥州に一人で向かったみたいなんだよね」
「Shit!馬鹿かアイツは。
アンタらも何でそんな事を許した」
何度も舌打ちをしながら佐助に苛立ちをぶつける。
部屋を何度も行き来きし、心を落ちつけようとするが上手くはいかない。
佐助は何も言わずに政宗を見守っている。
一体、何往復しただろうか。
覚悟を決める。
外行きの羽織に腕を通す。
「アンタのことだ。
大体の場所は掴んでいるんだろ」
「旦那が行くのかい。
怪我している身で無茶だよ」
「瑞貴が俺を目指してるんだ。
俺が行かずにどうする」
――実際、歩くのも辛い。
しかし瑞貴がすぐ傍まで来てるのだ。
どんな状況だろうと瑞貴を見つけ出す。
佐助の返事も待たずに、厩舎へ向かい歩き始めた。