中編(文)
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――瑞貴の村が襲撃されている?
報告を聞いた瞬間、部屋の空気が凍てついた。
報告に来た男に詰め寄る。
豊かな村だったから盗賊に狙われ、村は壊滅的な状態になっている。
男の報告がゆっくりと耳を通り過ぎる。
目の前が暗くなる。
取るものも取り敢えず、馬に乗り少し離れた小さな村へ走らせる。
小さいながらも活気があった村から上がる、灰色の煙。
詰まれた瓦礫。
村の様子を見て愕然とする。
壊滅的、その言葉に嘘は無かった。
――瑞貴っ!!
瑞貴の家のあった場所には煤けた家の残骸が残っているだけ。
アイツの姿が見えない。
明るくて、ちょっと我儘な小娘。
この家で愛されて育ったアイツは表情が豊かで、俺とは違う。
――でも、アイツと居ると優しい気持ちになれた。
実の弟よりも近い存在。
こんな崩れた村は瑞貴には似合わない。
「瑞貴……っ」
名を呼びながら、瓦礫を退ける。
「政宗様、若い娘は盗賊に攫われたと……」
「人身売買か?」
「恐らく。今、兵たちに追わせております」
「……小十郎、どんなことをしても見つけ出せ」
――瑞貴、生きている。
絶対に助け出してやる……。
「全力をもって追え、一刻の猶予もないと思え」
一人、空を見上げ立ち尽くした。