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□この、
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小さい頃はよく、駄菓子屋へ毎日の様に通っていたものだ。
数少ないお小遣いをほとんど駄菓子屋に使いこんで、親に怒られることもしばしばあった。
そんな事を思い出しながらも、箱の中に入っているお菓子を手にとり、代金を支払いに行く。
隣から、「よく食べるね…」と多少呆れ気味に言われたが気にしない。
お店のお婆さんは、お釣りと一緒に飴玉を手に握らせると、「また来てね」とほがらかな笑顔を見せてくれた。
店から出ると、これでもかと言うほどに太陽が照りつける。
コロコロと口の中で飴玉を転がしながら青山は暑い暑いとうなだれている一乃に言う。
「コンビニ行かない?」
「……あー…ソフトクリーム食べたい」
「ん。じゃ、行こっか。」
☆★☆
空調の効いたコンビニをウロウロとしていると、アイスコーナーの前で一生懸命アイスを選んでいる友人に霧野は尋ねる。
「…お前ってさ、」
「何だよ…」
「こーいうアイスは食わねぇの?」
と、ソーダ味の棒付きアイスを霧野は神童に差し出す。
神童は一瞬だけ顔を歪ませると、苦笑しながら、「あまり食べないな…」と霧野に言う。
「……だよなぁ…。お前みたいな奴は、この、高いカップのアイス買うんだろ?」
ガバっとアイスクリームが並べられているケースを開けると、カップの、高そうなアイスを取り出す。
「…………まぁ、そうだな…」
「いいよなー、金持ちは!」
ふてくされながら霧野は言うと、店内の入り口の方に見たことのあるような人影を人見つける。
すると、相手の方もこちらに気づいたらしい。
霧野は、その二人組に近づき、片手を挙げてあいさつを交わす。
二人のうち、一人は笑いながらあいさつをかえしてくれるのだが、もう一人は、
「……ちッ…」
と口に含んでいただろう飴玉をガリっと噛み、舌打ちをする。
(無愛想なやつ……)
やれやれと霧野はため息を吐き、神童を呼ぶ。
「しーんどっ! お前も来いよー」
わかった、と手に持っていたアイスを元の場所へ返すと、霧野達の元へ駆け寄る。
「あ…神童、久しぶり」
と、一乃が言うと、神童は微笑みながら「あぁ、久しぶり」と返す。
「………青山もいたんだな」
「お前もいるのか……」
何故か残念そうに言う二人を見ながら、一乃は霧野にいう。
「なんか、二人とも機嫌悪くないか……?」
「あー…そうだな……」
そんなことより、と霧野は一乃達に
「お前らは何しに来たんだ?」
くるり、と体を霧野の方へ向けると、一拍置いてから青山はこう言った。
「から揚げを、買いに来た……!」
キリっとした表情で言う青山に一乃は
「え…まだ食べるの?」
と、驚く。
そんな二人を見てハハッと笑いながら霧野は「食べるの好きだな、」と青山の頭上に手を乗せようとして、やめた。
「…霧野、何?」
「なんでも、ない」
「ふーん…」
☆★☆
「…神童、それ買うんだ」
一乃は神童の手に握られている少し値段の張るカップのアイスをジッと見る。
「駄目……なのか?」
「え。いや、別に良いと思うよ…!俺、そういうのあんまり食べないからさ」
そう笑いながら一乃はソーダ味の棒付きのアイスをとる。
「…俺も、一乃がもっているアイス、あんまり食べないな…」
「! じゃあさ、こうしないか?」
一乃ぱぁっと顔を輝かせると、
「俺のと神童のアイス、一口ずつ交換しないか?」
そうすれば良いだろ?と悪戯っぽく笑う。
「そう、だな。一乃が良いなら…」
そうしよか、と言おうとした瞬間、ズボッと自分と一乃の間に何者かが割り込み、
「良くない」
と、頬を振らませながら言う。
「青山……」
「俺だって、一乃のアイス食べたいし」
「じゃあ、青山も食べるか?」
こくり、と青山は一乃に頷き、神童の顔見てにやりと笑う。
「ま、そう簡単にはいかないからさ。…泣き虫君?」
「……………」
「神童…」
こいつも大変だよなと霧野は少し泣きそうになっている神童を見る。
(ま、俺もだけどな)