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□上と下
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お前は、ファーストランクのキャプテンで、俺はセカンドランクのキャプテンで、
同じ‛キャプテン‘でも、俺とお前は違っていて、

お前は、雷門サッカー部全体をまとめている上での本当のキャプテンだ。

俺なんてセカンド止まりだ。


キャプテンでも所詮はセカンドのキャプテン。
ファーストの奴らには敵わないことだっていくつかある。



だから、


お前が上で、俺が下。



それが俺達の関係なんだよ。




☆★☆




「一乃」

名前を呼ばれ、声がした方を振り向いてみる。

神童、だ。
走って来たのだろうか、息がだいぶ上がっている。

「お前、サッカー…本当にやめるんだな…?」


あぁ、またこれか。
たしか、退部したばかりの頃も何度も言われた。

苦笑気味に笑いながら一乃は神童に今まで何度も何度も言ったことを言う。

「サッカーは、もうやらない」


いつもはこう言うと、神童は「ごめんな」と悲しそうに笑う。

でも、今日は違った。


「本当にか? 本当に、それでいいんだな……?」


真っ直ぐな目でそう、訴えられる。
いつもと違う神童に焦りながらも、一乃は先ほどと同じこと言う。

「サッカーは、もう、やらないんだよ…!」

少し、声が震える。

「……絶対に?」

「それは……!」

絶対、と言われ少し戸惑う。

少しは、サッカーをしたいという気持ちがあるのだろう。
退部するときも、セカンドのみんなが辞めたから、だから自分も退部したのかもしれない。

「…お前が、どう言おうと俺はもうサッカーしないからな………っ」

そう踵を返し、その場を立ち去ろうと後ろを向いて歩く。

「…待てよ、一乃!」

しかし、それを阻むようにしてガッと神童に後ろから手首を掴まれる。

「!」



「俺は、お前とサッカーがしたいんだ」



ギュッと手首を掴む手に力が入り、神童は涙目になりつつある瞳で一乃をジッと見つめる。



「お前の隣で、一緒にサッカーがしたい」


ファーストとか、セカンドとか関係ないんだ。
ただ、俺は一乃とサッカーをプレイしたい。

神童はそう微笑みながら、一乃の手首を掴んでいる手をそっと離す。


「隣で………?」

「そう、隣で」



「……考えとく」




君の隣だったら、

君とだったらあの頃みたいなサッカーをできるかもしれない。


上とか、下じゃなくて。

右と左で、隣同士でもう一度、


君と一緒にあのフィールドを走りたい、



サッカーをしたい。


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