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□餌に釣られてやってくる
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カパっとお弁当の箱を開けると、まず、一段目にはハンバーグや、エビフライといった育ち盛りの自分には嬉しいおかずがたくさん詰められており、二段目には、ご飯にパラパラとふりかけがふってある。
なんとも食欲を誘うメニューだ。
箸で器用に唐揚げを掴み、口の前に持ってくる。
「じゃ、いたただきまー…」
「もーらいっ」
腕ごと箸を取られると、パク、と唐揚げを
誰かに取られる。
相手はペロリと口を舐めると、
「ごちそうさま」
と言って霧野に笑う。
「………ご、ごちそうさま…って?!」
「ん?…なに?何か文句ある??」
「な、あるに決まってるだろ、人のおかず勝手に食いやがって…!」
ギャンギャンと犬が吠える様に霧野は青山に文句を言う。
青山はうるさい、と耳を両手で塞ぐ。
「え、別にいいだろ?」
「よ・く・な・い!」
楽しみにしてたのに…と霧野がふて腐れていると、教室にある机に向かいに座って昼食を共にしていた友人、神童になだめられる。
「…じゃあ、俺の卵焼き食べる?」
スッと箸に掴まれている卵焼きを霧野の前に差し出す。
「食べる、食べる!」
「…………」
殺気を放っている青山の視線を感じながらも、神童は霧野に卵焼きを差し出す。
「どうだ……?」
「ん…。へー、神童の家って卵焼き砂糖で作るんだな……、美味いよ」
霧野はニッコリと笑うと、自分のお弁当箱の中から、エビフライを取り出し、神童の口へ無理やり突っ込む。
「…ん!………あ、うまいな」
「そうか?冷凍食品だぜ、それ?」
そんな二人の楽しそうな光景を見て青山は嫉妬したのか、俯いて、ぼそぼそと何かを言っている。
「…………な、のに」
「……?どうしたんだよ??」
「お、俺には……、」
「…俺には?」
神童を少し睨んでから、霧野をみて、青山はこう言った。
「霧野のおかず食べたら、俺には怒るくせに、どうしてこいつ…神童には怒らないんだよ…!」
青山はガラッと勢いよく扉を開けると、怒りながら教室を出て行った。
「「…………え?」」
霧野は何があったのか分からずポカン、としていたが、急に我に返る。
(いやいやいや……おかしいだろ?)
なんでだよ!!
と、つい叫びそうになったが、そこをなんとか堪え、神童の元を離れ、教室を出て行った彼を追いかける。
とりあえず、機嫌を直してもらうためにアンパンでも買って行ってやろうかと思いながら。
☆★☆
「…うん、俺が悪かった」
もしゃもしゃと口いっぱいにアンパンを頬張りながら青山は言った。
どうやら、機嫌は良くなったようだ。
霧野は一安心すると、先ほどの行為を青山に聞く。
「…で、なんで俺のおかず取ったんだよ??」
「え、だって、霧野の家の唐揚げ美味しいから」
なんで?と青山は頬っぺたに餡子をつけながら霧野を首を傾げながら見る。
(こいつ………!)
霧野はくいっと青山の上あごをつかみ、頬についている餡子をペロリと舐める。
「……ごちそうさまでした」
これでお相子な、と霧野は悪戯っぽく笑い、青山を見る。
「んな………?!」
当然の様に、青山は顔を真っ赤にし、ぼそりと呟く。
「お前って、本当に恥ずかしいやつだよな…」