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□とりあえず
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部活が終わり、先輩たちや一年生が帰っていく。
ミーティングでよく使われている部屋で神童は部誌を書いていると、「まだ帰らないのか」と制服に着替えた霧野が扉に背を預けて立っていた。

神童は「すぐ帰る」と短く返し書きかけの部誌に視線を落とす。

そんな神童に苦笑まじりにため息をつくと霧野は神童の隣に腰を掛ける。

「…まだ帰らなくていいのか?」
「いい。神童と帰りたいし」

霧野が微笑むと神童はピタ、と手の動きを止め顔を赤く染める。
しかしすぐに気を取り直すようにしと顔をふるふると振って、いつも通りの平然さを取り戻そうとする。

(これは面白い…)

いつも奥手な神童のことだ。

せっかく二人きりでいても一切手を出して来ないだろう。
だったらいっそのこと、こちらから誘ってみよう。

霧野はニヤリと笑うとキョロキョロと辺りを見渡す。

いつもは人でほとんどの席が埋まっているが、幸いなことに今は二人きり、誰かが来る気配はしない。



先ほどからつらつらと字を書いている神童の手に視線を落とす。


「神童の手って大きいよな…」

そう言って、霧野は神童の手をとる。

「綺麗で、指がスラッと長くてさ」

やさしく手を撫でながら霧野はちらりと神童を見る。


(……ん?)


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