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□もっと。
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もっと、欲張っていいかな。

なんて。




首にこれでもかと言うくらいにマフラーをぐるぐる巻きにして、コートの中に手を入れる。
そしてはぁっと息を吐くと煙みたいな白い息が漂う。
もう冬だなぁなんて思わせるような隣にいる彼の格好と行動につい神童は顔がほころぶのがわかった。
「しんどー」
マフラーに顔の半分を埋めた彼はモゴモゴと自分の名前を呼ぶ。
「どうしたんだ?」
と呼ばれた方へ顔を向ければずい、と彼の手が自分の頬へと伝わる。
突然の事に目を見張れば、手を差し出した彼が「つめたい」と呟いた。
「一乃…?」
「いや…、神童の顔真っ赤で寒そうだなぁって」
そう言って一乃はじぶんの暖かい手を神童の頬に滑らせる。

(あったかい…)
確かに、一乃の手は暖かかった。
たぶん、コートのポケットに手を入れてせいでもあると思うが、ただこの手が自分の好きな人の手なわけで。
むしろ暖かいというか、熱い。

「…なんか、神童の顔熱いな」
一乃は神童の頬に触れていた手を一度離し、彼の前髪をすくい上げるようにして手を額に当てた。
「…何してるんだ…?」
「神童、顔熱いし真っ赤だから熱でもあるかなー…って」
「そう…か」
「だって、こんな大事な時に風邪でもひいたら大変だろ?」
自分の額にも手を当てると一乃は「大丈夫だな」と微笑んで神童の額から手を離した。離した手を再びポケットの中へ入れようとしたが、するりと伸びてきた神童の手によって阻まれてしまった。
「え…神童?どうした??」
ギュッと握られている手と彼の真っ赤になっている顔を見れば、自分もだんだん顔が、寒さではなく、なんというか。恥ずかしくて顔が赤くなるのがわかる。

「風邪、ひいたかもしれない…」
「なんの…」



「………………恋の」

「へ?」





「(君のせいで不治の病にかかってしまったので治してください)」
「(あ、それと熱もひどいです)」
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