甲斐の国のツンデレ

□#5:言えない6文字
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「幸…腕…」

私の腕を押さえて、じっとこちらを見てくる幸村。


「離して…っ」


「今日は離さぬ!!!」


いっつも破廉恥、破廉恥って言ってるくせに今日に限って何だというのだ!!


「俺に言いたいことがあるなら、ハッキリ言ってくれ!そっちの方がお互いによいだろう?」




…そりゃ、そうだよ。

でもね、それが言えなくて困ってるの


勇気を出すしかない。
もう逃げられないんだから。


「その…ね、さっきのことなんだけど…」




「先ほどのこととは…?」





「…叩いちゃったこと。」


「あぁ。そのことであれば問題はない故!」



「で、その、叩いちゃって…」




このまま言えばいいんだ。
ごめんなさいって。
たった6文字じゃないか。


たった6文字。


あー!でも言えない!




「佑香」


「何?」



「俺は言われなくても分かっているでござる」


「へ?」


「それが佑香の愛情表現だろう?」



わー!!!

バレてる!バレてる!

顔がっ!顔が熱い!



「俺が親方様と殴りあうのと同じでござる!」




「違うわ!幸のバカー!!」



やっちゃいました。思いっきり。


でも今のは幸が悪い。


だって私が幸を想う気持ちは、幸と親方様が想いあってる気持ちとは別物なのに!



すぅ、はぁ、すぅ、はぁ、




深呼吸して落ち着いて、周りを見ると思った通り、幸が目の前で伸びてました。




するとスッと何か動く気配。
ガバ!と振り返るといつの間にかお兄ちゃんがいました。



「佑香!何してんの!?」



「お兄ちゃん…」


「また旦那をッ!」


「違うし!幸が悪いんだし!!」



きっと、ちゃんと私が謝れるかどこかで覗き見てたんだ!

趣味悪い!!


「もう。心にもないこと言っちゃうんだから。佑香は!」



「そんなんじゃないし!バーカ!バーカ!」



あ、お兄ちゃんの顔が険しくなった。
いや、険しくなるというより不気味な笑顔だ…



「女の子がバカなんて言わないの。」




「うっさい!」



……。




あれ?反応がない?

考え込んでるお兄ちゃん。


もしかして、また良からぬことを…っ!




「ちょっとさ、修行してきたら?女の子らしくなれるように。」


「へ!?」


(可愛い妹には旅を!!)


#5:言えない6文字

 
 

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