甲斐の国のツンデレ

□#7:邪魔者
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「あー…もう、幸の馬鹿…」

弁丸に乗ったまま頭を抱えた。
未だに幸の良い笑顔が頭から離れない。

顔が熱い。
こんなの変だ…!!

す、全ては…!!!

「幸のせいなんだから…!!」
「俺がどうかしたのか?」
「だから、幸…が………はれ!?」

弁丸から落ちない程度に驚く。

幸のせいにしながら走っているとふいに声が聞こえた。
横を見れば幸が同じ速さで馬に乗って走っていた。

いやいや、なんでいるの!?
てか、気絶していなかったの!?

「今仕事から帰っている途中だ。して、佑香こそどうした?」
「いいいいい、今、ここ、心の中よ、んだ…?」

幸を指で差しながらそう言う。
余りの動揺に噛みまくったが言えたから良しとしよう。
ただ、差した指が震えているのがいただけないと思うんだ。

「ん?何を言っている。全て声に出てたぞ?」
「…」

なんという失態だろうか…!!!!
再び頭を抱えた。

「で、なんで佑香がこんな所に居る。」
「う…」

そういえば、幸は知らないのか。
あの時、同じ場所に居たけど私のせいで気絶していたのか…

で、あの後すぐ気が付いて私が準備をしている間に仕事をして帰ってきたと…
けして、私の準備が遅いわけじゃない。幸の仕事が早かったんだ。
だって、まだ3刻ほどしかたってないし…?ねぇ。

「答えろ」

考え事をしていると幸が少し低くした声でそう言う。
胸が痛いほどバグバグ言っている。
ああ、もう、また変な感じだよ…!私…!!

「か、春日山に行ってきます…」
「春日山?上杉殿に会いにか?」

そう聞いてくる幸に首を横に振って訂正する。
そうすれば幸も分かったのかすぐにかすが殿か?と聞いてきた。

「うん。かすがの所にしばらく出かけるからしばらく私居ないよ」

そう言えば、幸は弁丸に止まれと言う。
そして弁丸は賢い子だからきちんと止まる。
頭を撫でれば嬉しそうに鳴いた。

幸は馬から降りて私に近づく。
そして、片手を差し出した。

何?と言いながらその片手を握れば引っ張られた。

一瞬で幸の腕の中へ閉じ込められた。

「うあああ…!!!ゆ、幸!??」
「…なぜ行くのだ。」

そそ、それは…っ!!!

またどもる。
てか、近い。近いです幸。
この近さは死ぬよ。心臓が破裂して死ぬよ?

「それは?」
「………………修行をしに行くの。」

ボソッと自分でも聞こえるかどうか怪しいぐらい小さい声でそう言えば、幸は聞き取れたみたいで。
忍びの修行か?と聞いてきた。

違う。と言いたいが、そうした場合ではなのだ?と聞かれそう。
聞かれたら答えれないよ…
『幸を殴らないための修行』とか…言えるか、馬鹿!!!!
ああ、でも、でも…!!!!

「俺は…お前に忍びになって欲しくない。」
「…へ?」

私があまりにも答えないから固定と見下みたい幸はまじめな顔をしてそう言った。
一気に頬が熱くなる。

うあああ、な、殴ってしまう。

「…俺は、佑香が」

幸がそう言った瞬間。

「ぐはっ…!!!」

幸はうめき声をあげて倒れた。
幸の腕に閉じ込められていた私の方へと。

何もしていない私が幸を支える事が出来るわけも無く、一緒に倒れる。

「…えぇ!!??」

悲鳴より先に驚きの声が出た。

私、まだ殴ってませんよ!?
本当だよ!!??

そう言って慌てていると、木からシュタッと誰かが降りてきた。

「…まったく。旦那は。」
「お、お兄ちゃん!!??」

木から降りてきたのはお兄ちゃんだった。
あ、顔が怒ってるわ。


「いくら旦那とはいえ、佑香は上げませんからね。」


ボソッとお兄ちゃんが何かを言ったが私には聞こえなかった。


#7:邪魔者

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