後ろのちょかべ

□#2:後ろの席のちょかべ君
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入学式の次の日から本格的な授業が始まることになっていた。



とはいえど、1時間目のLHRは自己紹介の時間に当てられ、クラスは浮足立っている。


もうすでに出席番号の早い順に自己紹介が始まり、またひとり立ちあがる。



当然のことながら、この1時間で顔と名前を一致させるのは無理だ。


それに、自分の番が回って来るまでドキドキで話半分にしか聞くことができない。



するとガタリと後ろの席が揺れた。
次は昨日の消しゴムの彼。


ひとつ後ろの席なので、振り返るのは少し恥ずかしい。

だから身体を横にする。


彼が立ちあがると、教室の一部から「アニキー!」と謎の声援が上がっている。

どういう関係・・・?


「お前らっ・・・!」


軽く声援隊(?)に目を向けると、彼の自己紹介が始まった。



「長曾我部元親だ。よろしく」




ちょーそかべ・・・もとちか・・・?




まったく漢字がわからない。

あれ?『ちょーそかべ』だっけ?『ちょかべ』だっけ?

紛らわしいな。




再び、後ろの席はガタリと音を立てた。



その後も順調に自己紹介は続き、ついに私の番となる。



イスの音を立てないように立ち、一呼吸して教室を見渡す。
クラスメイトの視線が集まり、少し照れる。


「仲本咲紀です。これからよろしくお願いします…!」



軽く礼をして席に着き、ふぅと息を吐いた。
するとつんつんと背中をつつかれる。

長曾我部元親だ。



「お前、咲紀っていうのか?」



先生にお喋りが見つかるといけないので、こくりと頷いた。


「・・・おし。」



何かを解釈した長曾我部元親は再び静かになった。



それから何事もなく、自己紹介を終え、休憩時間を迎えた。



消しゴムを返してもらうべく、後ろを思いっきり振り返った。



「あの!ちょかべ君!!」



長曾我部元親はギョッと驚いた顔をしている



「俺、長曾我部なんだけど・・・」



「あ、ごめん。間違えた。長曾我部君。」

長曾我部だったか。名前長い。
この際、ちょかべでもいいのではないかと思う。



「なんだ?」

頭に?が見えるくらいきょとんとしている彼を見て、忘れかけていた用事を思い出した



「えっと、消しゴム・・・・」



おお!と筆箱を漁るちょかべ君。



「これな。助かったぜ。サンキュー。」



「いえいえ」




受け取った消しゴムを自分の筆箱へ入れる。



その時、私はまったく気づいてなかった。
消しゴムのカバーの下に文字があることに


 


#2:後ろの席のちょかべ君
 

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