後ろのちょかべ

□#14:逢瀬の勘違い
1ページ/1ページ




松永先生が使っている教室へ向け、ちょかべ君とふたりで廊下をぺたぺたと歩く。



……ええ、気まずいです。





「あの、ちょかべくん?」


「どうした?」


「えーっと」



消しゴムのことを本人に聞いてみようと試みるが無理!!



首をぶんぶんと振り回してどうにか精神を保つ。


「咲紀、ノート、落ちちまうぞ」



ふと我に返り、一度ノートを抱え直す。




「なんか変じゃねぇか?何か悩みか?」




ええ。


でもね、原因はちょかべくんだよ!




「…ナニモナイヨ?」


「ぷっ!なんだ?そのカタコトは!」



豪快にガハガハ笑いだしたちょかべ君。




「ほら、着いたぜ」



松永先生が使っている教室、いわゆる資料室への前まで来た。


「ノート、貸してみ」


ひょいっとノートを取り上げられた。


「ほら、ドア。」



ちょかべ君に促されて、ドアをノックする。しかし中からは何の反応もない。



「あれ?いないのかな…?」



「開けてみるか?」



ガラガラ……



「失礼します。松永先生?」



しーんとしている室内。




「いねぇみたいだなぁ」



ちょかべ君はズカズカと教室に入り、先生の机にドカっとノートとファイルを置いた。



「じゃあ、帰ろうっか」



ふたりだけの教室はあまりにも気まずい。
ミッションは終わった。
すぐにでもこの状況を抜けだしたい。

くるりと向き直り、ドアに向かって歩きだそうとした時、グイっと手を引かれた。




「なぁ咲紀」


「…どうしたの?」



あの、ちょかべくん、手…

なぜ手を握ったまま…!?



「そのよぉ、」


どこかモジモジとしている


「ん?」



「その、好きな奴とか…いんのか?」



「へ!?」



好きな人?

好きな人…



「…わかんないかな」


「その、俺…」





「卿らはここで何をしている」





突然響いた声。



「松永先生!?」


突然のこの部屋の主の登場に、私もちょかべ君も驚きを隠せない。

松永先生はため息をつきながらこちらへ近寄る。


「卿らが好きあっていようが関係はないが、ここで逢瀬されるのは困るのだが。」



逢瀬…?


あ!手!!

握られたままだった!




「し・失礼しました!」




ちょかべ君を引っ張るようにして、松永先生の教室を後にした。


(絶対、勘違いされた!!!)



#14:逢瀬の勘違い
 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ