Final Fantasy 短編

□こころない
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それは、ファルコンで開かれた作戦会議の後のことだった。
会議が終わるなり早々に立ち去ったシャドウを除き、ほとんどの仲間がその場に残っていたが、誰一人口を開くことなく辺りがしん、と静まり返っている。仲間たちが注目するのは、張り詰めた空気をあふれさせている二人の男だった。
一人はフィガロの若き国王、エドガー・フィガロ。27歳という若さでありながらその手腕はフィガロ国内のみならず、帝国のガストラ皇帝を始めとする世界各国の指導者達に舌を巻かせているほどだ。そして、自身の持つ美貌と相手を惚けさせる饒舌により、多くの女性を魅了している。
エドガーと対峙しているのは、リターナーに所属するロック・コールだ。その名が示すとおり反帝国組織であるリターナーと帝国の同盟国フィガロ、帝国に決して知られてはならないその二つのパイプ役として動いている彼は、自身の持つ俊敏さを生かし、またどこにでも潜り込むその能力にかけて右に並ぶものはない。また、彼の強く主張するトレジャーハンターとしての腕もあり、罠の解除や暗号の解読、財宝に関する知識は広く深い。

「つまり、私を信用してはいない。そういうことだな、ロック。」

もし、エドガーとロックが本格的に対立したら、それはひいてはフィガロとリターナーの対立になる。帝国がおとなしくしているとは思えない。その状態でフィガロとリターナーが争えば、反帝国勢力は空中崩壊し、きわめて危険な状態となるだろう。

「誰もそんなこと言ってないだろ!決めるのは俺の勝手だ!」
「確かにね。ただ、私は右だ、と言ったんだ。それなのに、お前は左を取るんだな。」

お前とは長年の友人だと思っていたのに、と、少し悲しげな顔をしてみせるエドガーに、ロックは言葉に詰まった。

「俺は、別に、エドガーのことを信頼してないわけじゃない。だけど・・・お前って心ない奴だからなぁ」
「え?! ロック、エドガーは心がないの?」

「へ? 何の話?」と、言った本人のロックがティナの疑問を分かっていないのを見てとると、エドガーが軽く咳払いをした。そしてにっこりティナに微笑むと、優しくゆっくりと説明する。

「私が冷たい、とロックは言っているんだよ。言葉のあやだね。」

ふうん、と、ティナが納得しきれないまま頷いた。
後でもっとちゃんと説明することにし、エドガーはロックに二枚のカードを突き出した。



ふわぁ、と間の抜けたガウのあくびが広がる。さっきからこうやって二人がにらみ合ってもうかなり時間がたち、仲間たちもいい加減に飽きてきていた。
優柔不断な自分に対する仲間たち、特にセリスからの視線をひしひしと感じながら、ロックはなおも迷っている。

「レディ達をお待たせするのは良くない。ロック、早く決めてくれ。私は右をお勧めしよう。」
「あ〜! 分かったよ、右だ!!」

エドガーに差し出されている二枚のカードのうち、ロックは右のカードを取った。そして、ゆっくりとひっくり返す。

「エ〜ド〜ガ〜ーっ!」

引いたカードに描かれていたのは―――ジョーカー
がばっと立ち上がりみるみる顔が赤くなっていくロックに、エドガーはにっこり笑った。

「甲板掃除よろしくな、ロック」
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