Final Fantasy 長編

□Freedom
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街から離れている小屋の屋根からは、満天の星と月が見えた。月が照らす夜の世界は、昼とはまるで違う世界だ。虫の鈴を転がすような高い音、淡い月の光に照らされた森の奥から聞こえる夜光動物達の声。昔から何も変わらない月が眩しくて手をかざす。月に照らされて、かざした手がくっきりと自分に影を落とす。

マッシュ、と呼ばれて身を起こす。ロックだ。
軽い身のこなしで屋根へと上がり、隣に座った。
「お前、あれで良いのか?」
怒ったような声に、うん、と応える。
「何でだよ。エドガー、あいつ、記憶がないんだぞ。どれほど不安か、分からないのか?」
ロックが向ける怖いぐらいの顔を見て、本当に良い奴だと思う。
隠してしまいたいトラウマも自分の糧とする、この前向きな姿勢はロックの最大の強さだ。
「分かってる。」
「兄弟であることすら隠す必要がどこにあるんだよ!」
声を潜めて叫ぶロックは、掴みかからんばかりの勢いだ。
「兄貴を一番縛っているのは、俺だからだよ。」

『一緒に城を出よう! 兄貴だって自由になりたいって言っていたじゃないか!』
あの時のあの言葉は、〔俺を自由にしてくれ〕という叫びだと気がついたのは、ずっと後のことだった。
兄貴を守る、この10年修行してきたこの思いに揺るぎはない。
だが、兄はどう思う。兄は自分を出さない。出せないのだ、自分に自由を渡してしまったから。
自分がフィガロの国王だと知ったら、そして弟がいると知ったら、あの兄の事、何事もなかったような顔をして執務室に戻るに違いない。
想像を絶する孤独と不安が襲うことになっても、今しかなかった。全てを記憶を失った今こそ、あの人は【エドガー】として自由に生きられる。

(それに、兄貴は今、一人じゃない。)
兄にとりついたあいつは嫌いだ。弱くて、どうしようもないくらい情けない。だが、兄を傷つける事は絶対にないという事だけは断言できる。
『この人が俺の名前を口にするかどうか、にしよう。』
今考えれば、あいつの目的を達成するには、これほど良い方法はないだろう。
本当ならずっと兄の傍についていたい。だが、それよりもやらなければならないことがある。
賭けに勝ち、兄が戻ってきたときに、胸を張って迎える為に。


「ロック、泥棒の腕を見込んで頼みたい事がある。」
「トレジャーハンターだ!」
「かなり危険な事に巻き込む事になるから、嫌だったら断って構わないんだけど。」
むっとするロックに、笑いながら用件を頼む。微妙な表情を浮かべていたロックだったが、最後にはにっと笑ってウインクして見せた。

「この世界一のトレジャーハンター ロック・コール様に任せとけ!!」
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