Final Fantasy 長編

□night flight
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太陽が隠れると、海は黒一色の世界と化す。船乗り達は夜の導き手である星を眺めつつ力強く船を動かしている。
その船をはるか上空からカイエンが眺めていた。戦いの後、ずっとドマ復興に努めてきて、この景色を見るのも久しぶりだ。
コーリンゲンの酒場を後にしたファルコン号の甲板にはカイエンとセッツァーの2人だけがいた。

「良い天気でござるな。雲もない。」
「いや、風がなさすぎだ。この分だとドマに着くのは明日の昼ごろになるな。」
気分よさそうに微笑むカイエンに、セッツァーが苦々しげな顔で応えた。
それでも、飛空艇が滞る事もなく快調に飛び続けているのは、舵を握る船主セッツァーの巧みな技術とファルコン号の技術と整備が素晴らしいからこそだといえる。
「別に急いでないでござる。安心めされよ。」
にっこり笑うカイエンに、俺も暇じゃない、とセッツァーが返した。
明日の夜、セッツァーはカジノパーティーのゲストとして呼ばれていた。本当なら行きたくないのだが、ファルコン号の部品を手に入れる際に骨を折ってくれた工務店の店主に頼まれ、やむなく出席せざるをえないのだ。
「それに・・・・ドマの王様候補がそんな余裕で良いのか?」
煙草を口から離し、セッツァーがふうっと煙をはく。
セッツァーがケフカを倒したことはもちろん裏の世界でも知られている。もともと【最強のギャンブラー】、【世界唯一の飛空艇の持ち主】、などという異名の為に情報屋はよくセッツァーをターゲットにしてきたが、最近ではセッツァーが賭博場に入っただけで群がってくる。
狂信者の塔に集った者達の最近の動向にはじまり、フィガロ王の会議の内容、元帝国女将軍の最近の行動についてなど、情報は多岐に渡っている。そしていつのことだったか、カイエンが新ドマ王として擁立されるという情報もつかんだ。
戯言でござるよ、と笑うカイエンだが、その表情には一抹の寂しさがにじんでいる。王としてカイエンを擁立する事で、実権を掴もうとする者たちがいる。前ドマ王のもとでまっすぐに仕えてきたカイエンにとって、それがどれほど悲しい事か聞くまでもない。
「拙者はドマに忠誠を誓った戦士。王となる器ではござらぬよ。」
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