鋼の錬金術師

□海
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「兄さん、見て!海だよ!」
旅の途中でアルに言われて、俺はアルが指し示す方向を見た。
ちょうど日没が始まったところで、海に太陽の下端が触れていて。きらきらと海面に光が乱反射して、紅いビロードの絨毯のよう。
分かる、綺麗なのは良く分かるけど、はしゃぎ過ぎだぞ、アル。
まぁ、せっかくの美しい海だ。しばらく見ているのも悪くない。
休んでいこう、と言い出したのはどっちだったか。俺とアルは、2人で海岸に座ってしばらく海を眺めることにした。

本当に綺麗な海だ。昼間の蒼い海も好きだけど、夕焼けに染まる海もまた格別。
こうして海を眺めるのなんて旅を始めてからは何度もあるんだけど、もっと前にも見たことがある気がして俺は記憶を探ってみた。
旅を始める前、リゼンブールにいた頃、母さんが生きてて・・・・・
・・・・・・・あ、思い出した。
その時、誰と一緒にいたか思い出して、俺の顔がしかめっ面になる。
良かった、隣にいるアルは海を見ていて気づいていない。
あー、思い出さない方が良かったな。
あいつ、・・・・・・・ヴァン・ホーエンハイムと見た事なんか。
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