夢小説【短編】
□誘惑〜前編〜
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家に帰り熱いシャワーを浴びると、
もうこれ以上は無いという程に疲れて眠かった筈なのに変に目が冴えてしまった。
「明日も仕事なんだから寝ないと体が持たないんだが…」
こういう時は本やDVDでも見て眠気がやってくるのを待とうと適当な物を探そうとすると、
先ほど高野さんから貰ったDVDが目に入った。
こういう類の物を見る時は決まって少しでもなまえに似た人が出ている物を選ぶので、
高野さんの選択は間違ってはいないが…
複雑な思いで小さくため息を付きながらDVDを手に取れば、
ついなまえ本人を思い出し、思わずごくりと唾を呑みこんだ。
「最近してないしな…」
忙しすぎて一人でする暇さえ無かった俺は、久々の解放感も手伝ってその気になり、
DVDをプレイヤーへとセットした。
*
DVDを再生すれば、女優がインタビューをされるシーンから始まった。
やはり骨格が似ていると声も似るのか、話が厭らしい方へと進むに連れて手の中の自身が熱を持ち始める。
「なまえ…」
頭の中で女優となまえをシンクロさせながらいざ手を動かそうとしたその瞬間―。
「トリー!お疲れ様!打ち合げしよー!」
「なまえ!?」
合鍵で開けたのか、なまえは鍵を閉めていた筈の玄関のドアを開けて家の中へと入って来た。
「ちょっと待て!!」
なまえが玄関から歩いて来てリビングのドアを開ける迄にこの状況を何とかしなくてはと、
俺は慌ててズボンを腰上まで引き上げ、DVDデッキの電源を落として
DVDのケースをテレビ台の下の隙間へと滑り込ませる。
その瞬間、リビングのドアが開かれてなまえがひょこりと顔を覗かせて来た。
「お疲れ様」とにっこりと笑う綺麗ななまえの笑顔と、
酷い緊張感で心臓が張り裂けそうになりながらも、
俺は微笑んでなまえをリビングへと招き入れたのだった。