夢小説【短編】

□君は特別
1ページ/1ページ




羽鳥は端正な顔立ちに加えて、
クールで、頭が良くて、自分の感情を滅多に表に出さなくて…。
そこが格好良いからと女性達は羽鳥に好意を抱くのだけど、
実際に付き合ってみれば


『クール過ぎて愛されている自信が無い』

『恋人である私に関心が無さすぎる』


と言って諦めて、女性側からフッてしまう。
しかも振られたからと言って、羽鳥が悲しむ様子は全く無かった。


学生時代から羽鳥が色々な女の子と付き合っては、
同じ理由ですぐ別れるのを繰り返す姿を間近で見て来て


「トリはきっと、女性に対する執着が無い人なんだろう」


そう思っていた。


けれど…。


今私の胸には、しがみ付くように抱き着いて離れない羽鳥が居る。


「トリ。もう30分以上経つんだけど…まだ充電終わらない?」

やっと入稿が終わり、久しぶりに家に帰って来たかと思えば
『なまえ…会いたかった……充電させてくれ…』とだけ言って
私の胸へと抱き着いて来た羽鳥は、それからずっとこの体勢だ。

ソファに座って抱き着かれているとはいえ、
羽鳥は筋肉質で体格も良いので長時間この体勢でいるのは重くて疲れてしまう。
少しでも体勢を変えて貰おうと声を掛ければ、羽鳥はゆっくりと体を起こし、
今度は私全体を包むように力強く抱きしめて来た。

「まだ終わらない…まだなまえが足りない…」

甘えるように私の首元に顔を埋めれば、
縋るような声で、好きだの寂しかっただの愛してるだのの甘ったるい言葉を囁いて来る。


…この人は本当に、『あの』羽鳥なのだろうか。


幼馴染として育って来たのだから、紛れも無く本人だという事は勿論分かるけれど、
それでもこの余りの甘え様に疑わずにはいられなかった。


「ねぇトリ。トリってもっとこう…クールで女の人に関心薄かったよね?」
「え…?」


思わず思っていた事を問えば、
羽鳥は少し動きを止めた後に小さく微笑みながら私を見詰めて来た。


「なまえ以外の女性には…そうだったな」
「わたし以外…?」


少し驚いて羽鳥を見詰め返せば、
羽鳥はもう愛しくて堪らないと言った風に私の額に口づけを落として来た。


「なまえは…昔から俺の特別だから」


微笑んでそう言ってのける羽鳥に、私の顔には一気に熱が集まった。


(なんでそうも恥ずかしい事を簡単に言えるかな…)


恥ずかしくて俯く私に「可愛い」と言って更に至る所にキスを落としてくる羽鳥に、
私は更に顔を赤くさせる事しか出来なかった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ