CP小説

□熱帯夜
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蒸し暑い日が続く8月中旬。
昼間に比べればまだマシだが、夜に外でじっとしていても汗が滴る程の暑さの中
俺は丸川書店前の坂を一気に駆け下り、終電を逃すまいと駅に向かって走っていた。



熱帯夜



(間に合った…)
終電が来る数分前に駅のホームに着いた俺は、呼吸を整えながら終電を待つ。
そんな中周りを見渡せば酔っぱらっているサラリーマンや学生で溢れかえっていた
他社の人や、社会人でもない人達に思っても仕方のない事だが
『こっちは仕事をしていたのに…』と少し理不尽な気分になりながらも来た電車に乗り込めば
仕事の疲労に重ね酒の匂いや人の熱に眩暈を起こしかけたが、
何とか目的の駅迄辿り着いた。


(あぁ、暑い…早く風呂に入ってクーラーの効いた部屋で寝たい…)

蒸し暑い闇夜をとぼとぼと歩きながら、ようやく俺は自分の家に帰り着いた。

家に入ってすぐにシャワーを浴びて汗を流し
リビングに行ってクーラーのリモコンを入れれば
数分も経たない内に涼しい風が体にあたる。

「あー。クーラーって文明の利器だよなぁ…」


“ピンポーン”


爽やかな気分を楽しんでいると、家のインターホンが鳴った。

(こんな夜中に誰だ?…というか、高野さんしか居ないよな…寝てる事にして無視しよう)

こんな夜中に訪ねて来られて無事で済んだ事は一度も無い。
嫌な予感しかしない俺は無視を決め込む事にした。


“ピンポーン”“ピンポーン”

(しつこいな…寝てますってば…)


“ピンポーン”“ピンポーン”“ピンポーン”“ピンポーン”

(寝てる寝てる寝てる俺は寝てる!!)


“ピンポーン”“ピンポーン”“ピンポーン”“ピンポーン” “ピンポーン”“ピンポーン”“ピンポーン”“ピンポーン”

「あぁもう煩いですよ!!俺は寝てるんです!!」

「起きてんじゃねーか!!開けろ!!」

余りの煩さに叫んでしまった俺は、ため息を付いて玄関のドアを開けた。
そこに居たのはやはり高野さんで…つい2時間程前まで一緒に仕事をしていたというのに
一体何の用があると言うのだろうか。
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