CP小説
□その症状、病名不明
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街灯があるだけの闇夜の中、影二つを並ばせて俺と高野さんは家に向かって歩いていた。
なんでこの人の家は俺の家の隣なんだ…ただでさえ先ほど入稿を済ませたばかりで疲れているというのに、
無言の帰り道は気まずくて余計に疲れてしまうではないか。
自分から話題を振ろうにも共通の話題なんて仕事の話しか無くて…
八方塞がりの俺は口を閉ざしたままだった。
(このまま家まで15分以上も一緒に歩くと思うと気が遠くなる…)
何か救いの手は無いものだろうかと辺りに目をやると、住宅街の片隅にある小さなコンビニに目が行った。
そう言えば昼にコンビニのおにぎりを2つ食べたきり何も食べていない。
俺はこれ幸いとばかりに高野さんの方に向き直り、貼り付けた笑顔で口を開いた。
「あの!俺コンビニで夕飯買って帰りますんで!ここで失礼します!」
「は?」
不機嫌そうな高野さんの視線が刺さる、決して失礼な事は言っていないはずなのだが、
その痛い視線に思わずたじろいでいると高野さんは言葉を続けた。
「お前、昼もコンビニだっただろ?たまには自炊しろよ、野菜食え野菜。」
「うっ…仕方ないじゃないですか、この時間じゃスーパーだって開いてないし…」
文芸の編集をしていた頃は、ここまで酷い入稿は無かったので少しは自炊をしていたが、
丸川に転職して少女漫画担当になってからは本当に時間が取れなくて自炊した回数なんて両手の指で足りる程度だった。
「じゃあ、俺の家に来いよ。胃に優しい物食わせてやる」
「ご遠慮します!」
「お前すぐ怒るから高血圧になりやすそうだし、隣に居るのに死なれちゃ俺の監督不行届きになるだろうが」
高野さんはそう言うと俺の手を取りぐいぐいと歩いて行く、
余りの力強さに逆らえないと判断した俺は、不本意ながらも高野さんの家にお邪魔する事にした。
(あぁ…早く一人になりたい…)