マイナスから始まる恋
□マイナスから始まる恋
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―――――――……
池袋某所 居酒屋
愛羅視点
「よう、姉ちゃん。別嬪さんだなぁ」
『そうですかぁ?そんな事言ってくれたの、貴方だけですよ?』
「いやいや、本当別嬪さんでおじさん嬉しいよ」
「作さんは別嬪さん好きだからなぁ。姉ちゃん、作さんにセクハラ受けねぇように気ぃつけな」
あの男―――卓弥に頼まれた仕事は居酒屋での情報収集だ。
特に何でもない仕事かもしれないが、お客さん相手をする、という事は色々な情報が転がっていたりするので耳を傾ける事は忘れない。
こんな仕事に何の意味があるかなんて解らないが、少しでも[あの男]の情報が手に入れば―――そんな気持ちでお客相手にお酒を振る舞ったり、話をしたりしている。
『それで……[ダラーズ]ってどんなカラーギャングなんですか?』
「姉ちゃん、気になるのか?何を隠そう、おじさんもダラーズでなぁ。名前だけ登録すれば誰でもダラーズってわけよ!」
『……誰でも、ですか?』
「そうだよ。おじさんが後で姉ちゃんの携帯に送ってやろうか?」
『ええ、お願いできますか?』
今話題は正体不明の[ダラーズ]というカラーギャングだ。
特に興味はないのだが、そこから色々な話が聞けるかもしれないので使っている携帯電話ではない携帯を取り出し、目の前の酒に酔ったおじさんからアドレスを聞き出した。
―――これが、ダラーズ……。
そのままおじさんが私の携帯電話にダラーズのサイトを張り付けたメールを送って来たので笑って[ありがとうございます]と言えば、大体の人間は赤くなって嬉しそうな顔をするのだ。
大体の反応は解っているので、心の中で[馬鹿だな]と思いつつも顔には出さない。それが仕事、というものだからだ。
とりあえず、携帯電話でサイトに飛べば―――ダラーズの人間しか入れないようにパスワードがかけてあり、真ん中には大きな字で[DOLLARS]と書かれている。
「すげーだろ?おじさん、パソコンとかインターネット、っていうやつ?よく解んねぇけど、これ作った奴は頭いいな!」
『あははは……そうですね、凄いと思います』
中がどうなっているのか気になったが、ダラーズになるつもりはないし、卓弥が大体の事は調べてくれる。
後で聞けばいいか―――と思い、携帯電話を鞄にしまい、おじさん達との会話を続けた。
「姉ちゃん姉ちゃん、姉ちゃんは知らねぇかもしれねぇけどな、俺も情報通でよぉ。色々と調べてんだけど、折原臨也と平和島静雄だけには気を付けろよ」
『折原、臨也……平和島、静雄?』
知っていたが、知らないフリをすれば私と話をしていたおじさん以外のおじさんがこちらへとやってきて肩を叩き、話をしたそうにしているので首を傾げて話を聞く事にした。
「おっ、それはおじさんも聞いた事があるぞ。[新宿の折原臨也]、それと……[池袋最強の平和島静雄]だろ!」
「なんだよ、作さん。知ってたのかよー。せーっかく俺が姉ちゃんに教えてやろうと思ったのに」
『いえ、いいんです。教えてください』
何気ない会話から飛び出されるたくさんの情報。
それが後から役に立ったり、立たなかったりするのだが聞いていて損は少ない。悔しそうに戻ろうとするおじさんを引き留めれば、おじさんは[良い子だなぁ]と笑って私の隣に腰掛けた。