君のいる世界廻る星

□No.11
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この土地では、王や大きな権力を持った者などが死ぬと神として祭られる風習があるようだ。

そして、代々の王の墓が町の近くにあるらしくそこを訪ねる事にした。


町外れに、赤い鳥居が連なり、その奥に荘厳な佇まいの建造物が現れる。

城や聖堂とは違う見たこともない造りで、見慣れないカンナ達には物珍しく感じた。


「そこの異国の者!この神聖な墓場に名に用か!」

入り口に、二人のアシハラっぽい服装の墓守が一行に話し掛けて来た。
アンジュが前に出る。

「異国の文化に興味があって参りましたの中を拝見出来ませんか?」

「でぇい!入る事、あ、まかりならぬ〜!!」

方ほうの墓守がなにやら独特な動きをしながら奇声を発した。

「かまへんやん。自分ケチやなぁ喋り方ヘンやしぃ」

エルマーナが肩をすくめる。

「違いますよ、エルマナ、この方はカブキと言う芸者で、奇声を上げるのは芸の一環らしいです。さらにお座敷などでは一緒にお酒を呑んだり、遊んでくれたりするみたいです」

カンナはガイドブックを見ながら説明した。

「・・・何か色々間違っているな、そのガイドブック。」

リカルドがカンナから本を奪い、読んでみた。


「・・・とにかく、ここは立ち入り禁止だ。観光なら町の方を見て回られるがよい」

「・・・あ、そう。」

イリアは、くるっと墓守に背を向けた。


「ああ、もうっ!!話の通らない墓守だ。こんなにカワイイあたしが中をみたいって言ってんのに!ケチ墓守」


「陰口は本人を前にして言わない方がよいと思うぞ、異国の娘
とにかくここはとおせん。諦めるんだな」


その時、町中に叫び声が響き渡る。

「アマードボアだぁ!!!隠れろ!!!!!」

住民達は一斉に散り散りに逃げ惑う。

間もなく、二本の角を生やした猪が群れで町へ雪崩込んで来た。


「た、大変です!!!!皆さん、行きましょう!!!!」

一同はアマードボアを食い止めに、町へ走った。



ここからはもうアマードボアの群れVS一行の大乱闘。


ルカ、スパーダ、エルマーナが前線で大暴れ。

リカルドとカンナがバックアップ。

アンジュとイリアは怪我人の治療に当たった。



「みなさーん、頭上注意ですーっ!!!デモンズランスいきますよー!」

カンナが叫ぶと同時に、闇の力を帯びた槍が雨の様に降りそそぎ何匹もの敵を串刺しにた。
が、槍は敵味方構わず落ちてくる。スパーダとエルマーナの間にも一本落ちてきた。

二人は危機一髪で避ける。


「おわっ」

「姉ちゃん、ちゃんと落とす場所狙ってぇな!!!」

カンナは後ろからジェスチャーで謝る。


「・・・お前の魔法はいつも雑なんだ。あと詠唱を適当にするな。」

リカルドが遠方から地味で確実にアマードボアを射撃しながら言う。

「・・・はいはい、どうせ自分は魔法ニガテですよ・・・あそれっネガティブゲイトー!!!」


闇の空間が現れ、アマードボアを数匹巻き込む。

「ふむ、乱戦で便利だな、どれ・・・ネガティブゲイト!」

リカルドのネガティブゲイトもいい感じに敵を巻き込んだ。

カンナも負けじと、詠唱する。

「ネーガティーブゲイトー!」

「妙な発音をつけるな、ネガティブゲイト!」


いきなりのネガティブゲイト乱舞に、敵は態勢を崩し、ルカ達前線は勢いを増して殴りかかる。

群れの大半を片付け、残りは逃げて行った。


「・・・ふぅ、良い仕事しましたね!」

カンナが汗を拭う。

「全くだ。ノーギャラでここまでやった俺を褒め称えて欲しいくらいだ」

「いや、先輩のネガティブゲイトはまじパネェかったですよ。今度競技しましょう。詠唱の早さ正確さ、形の美しさと威力の高さで!」

「・・・形と威力はまだしも詠唱は圧勝する自信があるな。」



「あやつらを退治するとは、何と無茶な奴らじゃ。」


傷の手当てやら何やらしている一行に、小さなお爺さんが話しかけて来た。THE・仙人だ。

「うわっちっこいジジイや!!ウチと同じ位やで!?」

「こーら、エル。・・・あのあなたは??」

アンジュがエルマーナを後ろに隠しながら言った。

「ワシは、ジロチョウ。アシハラの現国王じゃ。」


「!!!?」

一同は口に出さず心の中で盛大に驚いた。

王に見えなっ!!!!!


「アマードボア退治、感謝いたす。じゃがアシハラは貧しい国での、ろくな礼も出来ぬのじゃ・・・」

「あの・・・でしたら墳墓の中を見せていただけませんか?」

「・・・言っておくが、金目の物は全て売り払い国費に充てたから盗るようなものはあんまり無いぞ?」

ジロチョウはいたずらに一行を見つめた。

スパーダが声を上げる。

「見くびるなよ。盗掘なんてするもんか。」

「では、何故入りたいのじゃ・・・」

一行は言葉に詰まるが、ルカが何かを思い着いたように言う。

「趣味なんです。」


趣味って・・・。

おそらくルカ除く全員がそう考えていた。

だが予想外にジロチョウは大喜び。

「それはそれは、良い趣味しとるのう!若いのに枯れておる。ワビサビを解しておるとは見上げた異国の若者じゃてぇ。よし、気に入った。そう取り計らってやろう。」


現国王の取り計らいにより、一行は王墓に入る事に成功した。


王墓はかなり階段を下った先にあり、その本体は深い海の底にあった。
そのためか少し息苦しいが、進むのには問題がなさそうだ。

むしろ問題なのは、


「うっわ!広っ!!!お墓でしょ?ここっ」

その広さだ。
まるで迷路のように通路が入り組んでいる。


「権力者のお墓って、大きく作られるのが普通だよ。」

ルカだ。

「もっとも此処は神殿としての意味合いも兼ねている見たいね」

という事は、祭壇のような場所に記憶の場のようなものがあるという事。

一行は、深く薄暗い王墓を進んだ。





「先輩・・・もしかして迷ってませんか・・・??」

カンナはジロチョウにもらったメモを見ながら先陣を切るリカルドに言った。

「・・・そんなはずは無い。メモ通だそろそろ着くはず」

「でーもっさっきから同じ景色じゃん!ぐるぐる回ってるとしか思えないんだけどっ」

イリアはとうとうバテて座り込む。

「って、アレ?イリア姉ちゃんの後ろの壁なんやねん。」

エルマーナの言葉に一同は壁を見る。

壁には大きな壁画が描かれていた。鍾乳洞でみた古代文字もある。
「とても古い物ね、ええと」

『初めは天も地もなく原初にただ創世神在りけり
永劫の孤独を疎み己の体を世界とし神々を生む。世界と神々共に在り
然し卑しき神に溢れし時来る
卑しき神、神にあらず
人と貶め天より地に落とす。
以後天地隔て悠久を経る』

・・・つまり世界は創世神・・・原始の巨人から始まったの。ひとりぼっちが寂しくて、自らの体から大地を頭から神々を生んだ。
そうして大地は栄えたけど、悪い神々も増え、そのもの達を閉じ込める檻として地上を作った。
天から下ろされ力を奪われた神々は人となり、それから長い時が経った。とあるの」


アンジュは壁画のないようをスパーダやイリア、エルマーナにわかりやすく翻訳した。

「そういや普通の人は自分達が神の末裔って知らないのよね、あたし達は記憶があるから知ってるだけで」

イリアにルカは軽くショックを受けたようだった。

「なんだぁ、じゃあ転生者は特別でもなんでもないのか・・・」

「いや違う、転生は天上界のみの仕組みだ。神ではない人間には起こりえない・・・はずだったのだが、なぜ今転生者が存在するのか。それがわからん」

リカルドでさえも頭を抱えた。

「ほな、人の全員が前世持ってるワケでもないん?」

エルマーナが自分の中で考えに考えた結果を出した。

「そういう事だ。あくまで我々は不測の事態にすぎん・・・」


リカルドがそう説明している間、ルカはぼんやりと壁画を眺めていた。

「ルカ・・・?」

カンナが近づくとルカは静かに語りだした。

「僕は・・・アスラは天と地を一緒にするはずだったんだ。何としてでもそれを成し遂げるはずだった・・・でも何故・・・」

天上は滅びたのか
ルカはそんな事を言いたかったのだろう。


一行は祭壇を目指し、さらに奥へ潜った。

ここからは長い一本道で、通路を行くと奥にまたひとつ壁画あがった。

何かを掲げる、人物。
その隣に男女がよりそっている。

アスラとイナンナ。そしてもう1人は・・・。

ルカがいきなり声をあげた。

「魔王・・・魔王だ!!!」

ルカは壁画の、光る何かを掲げる人物を指差した。

「マティウスは・・・魔王だったんだ。チトセが言っていた。マティウスはセンサスの全てを統る者だって・・・。」

・・・魔王?
カンナは首を傾げた。そんな人物はセンサスにいただろうか?

アンジュとリカルドによると魔王は謎の存在で、素顔を公にはしなかったらしい。

そしてこの壁画は魔王が創世力を使ったときの様子を描いたもの。

「ねぇ、みんな!こっちへ来て!記憶の場があった!!」

イリアの叫び声に、一行はさらに奥へ向かった。


そこには記憶の場があり、イリアがそれに触れると以前と同じく目の前に前世の光景が現れた。


天空城で対話するアスラとイナンナ。
2人は創世力について話している。イナンナはなぜか創世力を封印してと懇願している。



今回はこれだけだった。
あまりたいした情報ではなく、一行は落胆した。

またルカの話しによると、マティウスの前世である魔王が創世力を使い、天上を滅ぼしたらしい。

天上の滅んだ理由がわかっただけでもよしとし、一行は王墓をでる事にした。



「また、あの迷路を辿るんですね・・・気が重いです。」

暗く息苦しく長い通路にカンナは憂うつになる。


「まぁ頑張りましょ。ここをでたら何か美味しいものでも食べよ?」

アンジュの言葉にカンナだけでなく、コーダとエルマーナも飛び跳ねて喜んだ。

「んだよ、食べ物ひとつで舞い上がりやがって・・・おわっ!?どしたルカ?」

ルカが急に立ち止まったので、スパーダが激突した。
一同は不思議に思い、ルカを見てその目線を辿る。



「・・・・・・チトセ・・・・・」


そこにはチトセがひとりぽつんと佇んでいる。
思い詰め、けれど何かを決心したような表情で。


こんなところに何故チトセが・・・。


彼女はルカを見つめ口を開く。


「・・・・アスラ様・・・どうか私と一緒に来てください・・・」







to be continue No.12.

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