ひかり輝くものがたり

□BAD END KISS
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大好きな大好きなひとと

一緒に歳をとれるって事は


一見当たり前のように見えて

とっても とっても



幸せな事だと思うの。




わたしたちも


そうあれたら、良かったのに、ね。





「・・・・行くな。」

ニコが腕を離してくれない。


「離して、お願い。」

「嫌だ。絶対に離さないから。」

ニコは泣きそうな顔で、わたしを引き寄せる。

頼りない、細い腕に抱かれてわたしも泣きそうになった。

「ノコ、もう戻らないつもりなんでしょ?そうなんでしょ・・・?オレわかるよ・・・だって・・・」

言葉が切れた。
ニコの心臓が大きく速く、鳴ってる。
顔は見えないけど、でも泣いているのがわかった。
わたしを包み込む腕も、喉も、小さく震えていたから。

でもそれはわたしもおんなじみたいで、
涙を堪えるのに必死だった。


泣いちゃダメ、泣いちゃダメ



お別れは、笑顔でするんだから。

「ニコ大好き。大好き。大好き」

「知ってるよ・・・知ってる・・・。だから行かないでよ・・・。」

「行かなくちゃ、いけないの」


「わかってんのかよ、行ったらもう戻って来れないんだぞ、消えちゃうんだぞ、
ノコの体も声も笑顔も思い出も心も全部、消えちゃうんだぞ
オレはそんなの嫌だ・・・っ」


ニコが大好き。ほんとうに、大好き。

「それでもね、行くの、行かなきゃいけないの。大切な人が泣いてるから」

ニコの肩を押し返す。
少しだけ背の高いニコを見上げたら、顔をしわくちゃにして、涙をぽろぽろこぼしてた。

わたしはニコにキスをした。
ちょっと背伸びしてほっぺに一回。

「大好きな大好きなニコ。誰よりも幸せになってね」


「ノコ・・・!ノコ!!!!!!!」


さよなら


愛しいわたしのニコ。






深い深い闇に潜った。

ゲーデを探して、ゲーデを探して

まだ潜るずっとずっと奥へ

もう帰り道なんてわからなかった。もともと必要の無いものなのだけど。

呼んだ。

ゲーデの名前を呼んだ。

声が潰れるくらい叫んだ。


会いたいよゲーデ。

泣かないでゲーデ。



わたしはゲーデの泣き声を辿ってさらに潜った。



やっと見つけた。

深い闇のなかで独りぼっち泣いてるゲーデを。


「来るなぁ来るな来るな来るなぁ!」

わたしを見てゲーデはもっと泣いた。



でもね、前に言ったでしょ


世界がどんなにあなたを拒絶しても


わたしがあなたを受けとめるよ。

って



だからもう泣かないで。


ゲーデを思い切り抱き締めた。

大好きだよ大好きだよ大好きだよって

唇にキスをした。



それでもゲーデは泣き止まない。

「何で来たんだよディセンダー」


ゲーデはわたしの肩を抱き締めた返した。

「ゲーデに会いにきたんだよ」

それでも、

「だから笑ってよゲーデ。泣かないで」

それでも


「ならお前も泣き止めよ」


涙がとまらなかった。



大好きなあなたと一緒に消えるって事は



大好きなあなたと一緒に最後を迎えられるって事は



幸せな事だと思ってたのに



大好きだって伝えあっても


あなたの腕の中にいて抱き締めあっても


キスをしても



寂しいが埋まらない。


悲しいが埋まらない。



もっともっと欲しくなる。





わたしたちを光が包む。

わたしもゲーデも光に掻き消されて行く


キスをした。

何度も何度もキスをした。


お互いの感覚がなくなるまで抱きしめ合って、

キスをして、




光の中で最後に見たのは



ゲーデの涙だった。




BAD END KISS
(ずっと一緒にいたかったのに)(消えてまったら何も残らない)








*

報われないディセンダー。
どんなに大好きで、一緒にいても消えてしまうのはやっぱり寂しい。
美しいバッドエンドをめざしましたが、やっぱり後味が悪いですね・・・。



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