ひかり輝くものがたり
□この胸に灯る
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「ゲーデ」
彼女が俺の名を呼んだ。
俺の嫌いな名を。
「何だ」
すぐ隣に近いくらいべったりと座るノコを、見る。
ノコはまたへらへらとアホみたいな笑顔で嬉しそうに笑う。
「なんでもないよー」
「・・・用もないのに呼ぶな。」
そもそも用も無いのに甲板で隣合わせで座っている事だって、奇妙なのに、ノコは「わたしは此処が好きの」と言い張りどかない。
かと言って俺がどこうとしても無理矢理阻止してくる。
本当に変な女。何を考えているのだか。
「ゲーデ」
まただ。
「・・・用も無いのに呼ぶなと今言った」
「・・・どうして?」
こてん、と首をかしげるノコ。
「・・・用が無いのに呼ぶ理由なんてない。それに、」
何故か急にノコと目を合わせるのが嫌になり顔をそらす。
「俺の名前なんて、聞きたくない。」
ノコの顔を見るのが嫌になったわけじゃない。
ただ自分で自分が嫌になった。
"ゲーデ"
そう聞くたび、自分の存在を思い知る。
人の負から生まれ、人々から拒絶される存在。
人の鬱陶しい感情。人の心の闇。
「ねぇ、ゲーデ。」
「だからっ、呼ぶなって言っただろ・・・!」
とっさにノコの手を振り払ってしまう。
しまった、と思ったときにはもう手遅れ。
心がじんじんと痛む。
俺は、俺が情けない。
俺は俺が嫌いだし、名前だけじゃなく、この手も、体も全て。
「わたしね、ゲーデが好き」
突然の言葉に、心臓が飛び跳ねた。
思わずノコを見たら、目が合ってしまって目のやり場に困ってしまう。
「ゲーデの名前も大好きだし、髪の毛も声も目も」
ノコはそっと俺の、骨のような固く冷たい手を握る。
「この手も。ゲーデの全部が大好きなの」
よくもそんな事を軽く言ってくれるな、と思うと同時に
自分の頬がほんのりと熱くなる。
「だからゲーデが嫌でも、わたしは大好きなの!それを忘れちゃだめだよ!いい!!?わたしはゲーデがだーいす」
「も、もういい!!!!さけぶなバカ!」
なんなんだよ、この女は。
・・・でも不思議だ。何か負だとかなんとか、こいつといるとどうでもよくなる。
「それに・・・ちゃんと理由もあるんだよ。」
ノコは少しもじもじする。
何だよさっきまであんな事大声で叫んでた女が。
「名前を呼ぶとね、ゲーデがこっちを向くでしょ。それが、凄く凄く嬉しいんだ。」
ノコは、はにかむ。
ほんとうに変な女。
へらへらするし。アホだし。
でもなんでか
こいつと居ると、胸が熱くなる。
まるでそれはランプに灯す光のように温かく広がって。
俺はそれが、案外嫌いじゃない。
この胸に灯る
(その光は強さを増していく)(愛おしさが重なる度に)
*
♀×ゲーデでほのぼのを目指すの会\(^O^)/
ゲーデは生まれ変わった(設定)なのにもかかわらずネガティブ!